和田崇彦 木原麗花
[東京 5日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大で訪日観光客が急減し、地域経済への影響が深刻化するリスクが高まっているとして、日銀内で金融機関への資金供給を拡充する案が浮上している。関係者が明らかにした。新型肺炎の感染拡大が年度末に重なったことで、金融庁は中小企業への資金繰り支援を徹底するよう地域金融機関に要請している。資金供給の拡充が実現すれば、打撃を受けた中小企業へのサポートが充実し、地域金融機関の財務面への影響も緩和されることになる。
日銀はこれまで、成長基盤強化を支援するための資金供給、東日本大震災の被災地金融機関を支援するための資金供給オペ、2016年の熊本地震の被災地金融機関を支援するための資金供給オペなどを打ち出してきた。3月18―19日の金融政策決定会合で、既存の枠組みを利用するか、新たな制度を創設する案が浮上している。
黒田東彦総裁は4日、参議院予算委員会で「1―3月期は自然災害による下押し圧力が薄れるので、(19年10―12月期に比べて経済が)回復すると考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンド消費や輸出などに影響が出てきている」と指摘。日銀が景気の現状判断を引き下げたことを示唆した。「今後さらに長引けば、生産活動などにも影響が出てくる。中国経済のプレゼンスが大きいことや消費者マインドへの波及のリスクなどを考えると、影響が大きくなる可能性は十分に意識しておく必要がある」とも述べた。
日銀内では、中国からの観光客の増加の恩恵を受けていた観光関連業が、訪日外国客の急減で打撃を受け、地域経済に影響が及ぶことを懸念する声が出ている。
金融庁でもこうした懸念が出ている。ある幹部は、訪日客急減の影響が地方の中小企業の経営悪化を通じて地域金融機関に及ぶことを懸念。「新型コロナウイルスの影響がどこまで出るか見通せない中で、地方銀行は新年度の業績見通しに与信コストをどう計上するのか、悩ましい問題だ」と話す。
日銀は、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす実体経済や金融市場への影響を注視している。感染拡大が止まらない中、経済への影響を定量的に見極めることは難しく、マイナス金利の深掘りなど追加緩和に踏み切るべきか、日銀内でコンセンサスは定まっていない。
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March 05, 2020 at 03:11AM
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日銀に金融機関向け資金供給の拡充案、新型肺炎の観光への打撃警戒 - ロイターニュース - 経済 - 朝日新聞社
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