高輪ゲートウェイが試金石に
JR東日本をはじめ全国の公共交通機関は先の見えない新型コロナウイルス感染症との戦いの中、今日も輸送サービスを供給し、社会を支える役目を果たしている。長期に人々の移動が制限される経験によって、生活スタイルや企業活動を見直す動きは確実に進むだろう。収束後の未来が過去の延長線上に存在しないのならば、世界最大の鉄道会社であるJR東でさえも、変革を急がなければ生き残れない。
3月14日に開業した山手線・京浜東北線の新駅、高輪ゲートウェイ駅。JR東日本の三輪美恵執行役員は、開業前に開いた報道公開で「“やってみよう”というコンセプトの駅だ」と紹介した。人工知能(AI)案内、警備・清掃ロボット、無人決済コンビニエンスストアなど、まだ実証実験レベルにある技術を営業駅に投入した。
AI駅案内は、首都圏の駅構内で2度に渡る実証実験を経て試行導入となったが、設置環境やユーザーインターフェースなど、改善が必要な課題が挙がった。警備・清掃ロボットは事前に、さいたま新都心駅で試験を実施して臨んだが、駅特有の段差や動線、通信環境など対応に苦戦する機種もあり、安定稼働にはまだ遠い状況だ。
すべてにおいて安全・安定を最重視するJR東はこれまで、輸送だけでなく各種サービスの実施も“石橋をたたいて渡る”ような慎重さで臨んできた。前例踏襲を是としてきた文化の中、高輪ゲートウェイ駅での大量の新技術展開は、JR東にとって異例のチャレンジだったとも言える。実際の駅での実証は、開発スピードを加速させることが可能だ。早期の実用化を目指せる点で大きなアドバンテージになる。
深沢祐二社長は以前から「未来の駅を想像できるような新しい技術」を新駅に盛り込むと説明してきたが、単にショーケースや実験の場としたかった訳でない。JR東のある幹部は「会社の変化の一端を社内外に示す意図がある」と解説する。
JR東は2018年7月に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」で、鉄道起点からヒト起点のビジネスモデルへの転換を掲げた。高輪ゲートウェイ駅と国際交流拠点「グローバルゲートウェイ品川」をエキマチ一体で開発するプロジェクトは一つの象徴と位置づけられる。
ヒト起点のサービスを実現するには、これまで以上に利用客のニーズを把握することが重要だ。従来はJR東の“ものさし”で作り手側の論理に従ったサービス提供になりがちだった。輸送サービスでは、それが合理的だとしても、生活サービスは顧客からの期待を最優先しなければ満足度は高まらない。“やってみよう”の駅は、社内の意識を内向きから“顧客視点”の外向きへとシフトできるかの試金石でもある。
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May 01, 2020 at 06:20PM
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移動ニーズ縮小のJR東日本、“やってみよう駅”で生き残る(ニュースイッチ) - Yahoo!ニュース
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