【台北=矢板明夫】台湾が56年ぶりの干魃(かんばつ)で深刻な水不足に陥っている。台湾は「世界の半導体生産基地」といわれるが、半導体生産には大量の水が必要だ。13日には発電所の事故で大規模停電が発生し、電力供給の不安も改めて浮上。水と電力が不足すれば半導体生産に支障を来す可能性があり、関係者は危機感を募らせている。
台湾では昨年、台風が一度も上陸せず、今年に入っても降雨が少なかった。このため、各地のダムは貯水率が大幅に低下。当局は3月、6年ぶりに非常警報を発令し、中部・台中市などでは週2日間の計画断水が続いている。農業への影響は深刻で、各地の宗教施設では雨乞いの儀式が相次ぐ。台中では、盧秀燕(ろ・しゅうえん)市長が2時間以上ひざまずいて道教の女神「媽祖」に祈願する姿がテレビで放映され、話題を集めた。
蔡英文総統は今月3日、北部の主要水源の石門ダム(桃園市)を視察し、新たな水源の開発とダムに堆積した土砂の排出を求めた。報道によると、17日現在の貯水率は石門ダムが約13%、中部の鯉魚潭ダム約3%、南部の曽文ダム約6%と、いずれも「極めて危険な水準」にまで減っている。
台湾には、半導体の受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)など多くの半導体工場があり、その製品は各国のハイテク産業を支えている。半導体生産には大量の水が必要なため各企業は現在、廃水の再利用や地下水の汲み上げなどで対応している。梅雨でも水不足が改善されなければ、半導体の減産や価格上昇につながる可能性もあるという。
一方、南部・高雄市の火力発電所が13日午後、変電設備の故障で停止。本島全域で計画停電が実施され、混乱は約5時間に及んだ。半導体工場が入居する工業団地は対象から外れたが、停電で製造設備が急停止すれば甚大な損害を被る可能性もあった。
台湾では2017年8月にも、火力発電所への燃料供給ミスが原因で本島全域で停電する事故があった。蔡政権は25年の脱原発を目指しており、「原発が止まれば、台湾は慢性的な電力不足に陥る」と懸念する声は根強い。南台科技大准教授で経済評論家の朱岳中氏は「水と電力の安定供給は半導体製造の命なのに、当局は重視してこなかった。その場しのぎではなく、しっかりした対策を取ってほしい」と話している。
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