
自動車産業向け半導体の不足が長期化している。車に限らず半導体の需要が急激に高まる中、米国や中国は国家戦略として確保に乗り出している。日本も国産に拘泥せず、幅広い視野で安定供給を目指すべきだ。
トヨタ自動車は七日から岩手県の工場の稼働を一時的に停止。宮城県の工場でも今月中に同様の措置を取る。稼働を停止する期間は二工場三ラインの合計で十六日間となる。日産自動車やホンダなども今年に入り一時生産停止を実施しており、半導体不足は国内経済をけん引する自動車産業全体にとって喫緊の課題でもある。
昨年、各メーカーはコロナ禍で車自体の売れ行きが減るとみて半導体の発注を絞った。しかし米国と中国での市場回復が予想以上に早く、半導体の需給は一気に逼迫(ひっぱく)した。三月には車向け半導体を製造するルネサスエレクトロニクスの工場で火災が起き、不足に拍車をかけた。
経済産業省は先週、国産半導体の再起に向けた構想を発表した。世界をリードする台湾メーカーを誘致する一方、巨額予算を使って国内に生産拠点をつくる内容だ。ただ忘れてならないのは、経営破綻の例もある国主導による業界再編の苦い経験である。
半導体市場の特徴は、山と谷の落差が極めて大きいことだ。半導体メーカーの合従連衡を再び安易に進めたり新たな投資を行ったりしても、市場動向を読み違えれば同じ失敗を繰り返すことになる。
車に搭載する人工知能(AI)や電気自動車(EV)の需要が高まる中、戦略物資としての半導体の存在感は今後、加速度的に増していく。そこで必要となるのは自国生産による市場の覇権を目指す米中とは一線を画した日本独自の戦略だろう。
日本は半導体の製造装置や生産に欠かせないフッ化水素といった分野で依然、高い競争力を持つ。強みのある分野に投資を集中し、利幅の薄い自動車向けは国内外の多くのメーカーからバランス良く調達する。国産だけにこだわらないこうした多角的な供給戦略が、最も効率的ではないか。
産業の育成には官民の協力が欠かせないが、半導体については政府が供給確保に向けた外交努力や効率的な予算配分を担当し、企業は技術力の向上に集中するなど、役割分担で再起を図るべきだ。
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