IMFは4月19日、2022年の世界の消費者物価(年平均)上昇率(インフレ率)が前年比7.4%との見通しを示した。2021年10月時点の見通し値の3.8%から大幅に上方改定した(添付資料表1、2参照、注)。ウクライナ危機に起因する商品・エネルギー価格の高騰に加え、供給網の混乱による需給の不均衡、労働市場の人手不足などが影響した。
最新の「世界経済見通し」(英語、日本語)によると、大きな上方改定が目立つのは、新興途上国・地域だ。2022年のインフレ率は8.7%と、2021年10月時点から3.8ポイント引き上げられた(2022年4月21日記事参照)。
特に、ウクライナ危機の当事国であるロシアのインフレ率は16.5ポイント引き上げられ、21.3%となった。また、ロシアなどからの食糧供給に依存する中東・中央アジアやサブサハラアフリカも引き上げに寄与している。他方、アジアの新興・途上国・地域は0.7ポイント引き上げと改定幅は小さい。IMFはコメ価格の下落が同地域の生活費上昇を軽減したと分析する。食糧価格については、2022年は約14%の伸びが底堅く続くとしつつ、2023年には緩やかに下落すると予想している。
先進国・地域の2022年のインフレ率は5.7%と高水準にあるものの、前回見通しからの引き上げ幅は3.4ポイントとなった。ウクライナ危機を含めて、化石燃料の供給が圧迫され、エネルギー価格が急騰したことにより、米国は4.2ポイント、ユーロ圏は3.6ポイントそれぞれ上方改定された。IMFは、石油・ガス価格は2022年に55%、147%ずつ上昇した後、供給が調整される2023年には下落するとみている。米国では、労働市場の逼迫も深刻化した。人手不足により名目賃金が上昇したこともインフレに寄与したとされる。
他のインフレ要因として、IMFは、供給網の乱れによる需給バランスの崩れを指摘する。2021年も、新型コロナウイルス感染拡大に対する政府支援策による特需があった一方、感染拡大による工場閉鎖や港湾の制限などがあり、需要に見合った供給ができなかったとIMFは指摘する。
今後は、サプライチェーンの障害は軽減されるとしつつも、中国における都市封鎖やウクライナ危機、対ロ制裁が複数の部門で2023年まで供給上の混乱をもたらす可能性があると懸念する。IMFは今回見通しで2023年のインフレ率を前回から1.5ポイント引き上げ、4.8%と予想している。
(注)IMFの「世界経済見通し」データベースは毎年4月と9~10月の2回更新される。インフレ率については、世界全体および一部の国・地域について、前回1月時点でも見通しが発表されている(2022年1月26日記事参照)が、包括的なデータセットの更新は行われていない。
(藪恭兵)
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