価格の安いジェネリック医薬品(後発薬)の品不足が長期化している。必要な薬が患者に届かない事態にならないよう、国とメーカーは対策を急がねばならない。
品不足の背景には、メーカーの相次ぐ不祥事がある。
「小林化工」(福井県)は2020年、爪水虫の治療薬に誤って睡眠導入剤の成分を混入させ、事業からの撤退に追い込まれた。
大手の日医工(富山市)は、試験で不合格となった錠剤を砕いて作り直していたとして、業務停止命令を受けた。その結果、経営が悪化し、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の申請を強いられた。
こうした状況から後発薬の製造が滞り、昨年8月末時点で品不足はすでに約3000品目に上っていた。薬局の業界団体のアンケートでは、75%の薬剤師が昨年6月より「流通が悪化した」と答えており、改善の兆しは見えない。
薬局では、割高な先発薬や他の後発薬への切り替えで品不足に対処しているという。家計の負担が増すほか、薬の変更で飲み間違いのリスクも高まりかねない。品薄状態の解消が急がれる。
供給がストップしないよう、過度に在庫を抱え込んでいるメーカーや卸業者もあるとされる。厚生労働省は3月、約2000品目について出荷調整をやめるようメーカーに要請した。流通の目詰まりを早期に解消する必要がある。
米国では、供給に不安のある薬の情報をデータベースにして、公開している。流通過程が透明化されれば、在庫を抱え込む必要は薄れる。行政と業界が連携し、こうした制度を導入してはどうか。
相次ぐ不祥事は、後発薬への信頼を損ねている。薬の安全性は患者の命に関わることを業界が再認識し、二度と同様の事態を招かないよう、法令順守や品質管理に努めなければならない。
そのためには、人材育成や設備投資が重要だ。後発薬メーカーは最大手でも売上高が2000億円弱で、経営体力に乏しい中小企業が多い。再編によって基盤を強化することも大切だ。
後発薬の普及を推進してきた国の責任も重い。メーカーは急激な市場拡大に追いつけず、体制が整わないまま無理に薬の製造を続けてきたと指摘されている。
後発薬がある薬の場合、8割は後発薬が選ばれており、医療を支える基盤になっている。安定供給に向け、国もメーカーに対する検査の強化に取り組むべきだ。
からの記事と詳細 ( 品薄続く後発薬 安定供給は国と業界の責務だ - 読売新聞オンライン )
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