ドイツ経済に、第2次世界大戦後最悪の危機が近づいている。ロシアが、パイプラインを通じてドイツに供給する天然ガスを通常の半分以下に減らしたのだ。ドイツ政府はガス逼迫警報を発令。残る3基の原発の運転継続について議論が再燃している。
左から、緑の党所属のハベック連邦経済・気候保護大臣、オラフ・ショルツ首相、自由民主党(FDP)所属のリントナー連邦財務大臣。緑の党では原発反対派が力を持つ。FDPは「イデオロギーにとらわれない議論を行うべきだ」と主張する(写真:AP/アフロ)
6月15日、ドイツの政界・経済界に衝撃が走った。ロシアの国営ガスプロムが、海底ガスパイプライン「ノルドストリーム1(NS1)」に供給するガスの量を、通常の1億6700万m3(1日当たり)よりも40%少ない1億立法メートル(m3)に減らしたのだ。その翌日には、追い打ちをかけるように、通常よりも60%少ない6700万m3に減らした。
ロシアがガス供給量を60%削減
ロシアと西欧を結ぶガスパイプラインは3本ある。そのうち、ウクライナやポーランドなどを通過することなく、ロシアからドイツへガスを直接送るNS1は1日の輸送量が最も多い。ドイツだけではなく、フランスやイタリアなど西欧諸国の経済にとっても、“製造業にとっての血液”を輸送する重要な「動脈」の一つとなっている。
ガスプロムは供給量を大幅削減した理由について、「ガス圧縮装置に故障が見つかったが、ドイツのシーメンス・エナジーが修理できないため」と説明している。ロシアの主張が正しいかどうかは分からない。EU(欧州連合)がロシアに科す経済制裁措置のため、ドイツ企業はロシアのエネルギー関連企業に修理などの便宜を供与することを禁じられている。
ドイツ連邦経済・気候保護省のロベルト・ハベック大臣は6月17日、「故障というのは口実だ。プーチン大統領は、ガス供給量を大幅に削減することでドイツ経済に攻撃を仕掛けている」と発言。ロシアがドイツ国民を不安に陥れるべく、わざとガス供給量を減らしているとの見方を打ち出した。
ロシアがガス供給量を通常の半分以下に減らした6月16日は、ドイツのオラフ・ショルツ首相がフランスのエマニュエル・マクロン大統領やイタリアのマリオ・ドラギ首相らとともにウクライナの首都キーウ(キエフ)を初めて訪問し、ウクライナのEU加盟候補国への指名に向けて強い支持を表明した日だ。
さらにドイツは6月、7両の自走榴(りゅう)弾砲PzH2000をウクライナに送り、同国への軍事支援も強めていた。ドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)は「ロシアがガス供給を大幅に削減したのは、プーチン大統領によるドイツへのどう喝だ」という見方を示している。
7月11日に完全停止か?
ロシアがガス供給を減らした分は、他の国からの供給を増やすことで相殺できている。今のところ、ドイツなど西欧諸国でガス不足は起きていない。
しかしドイツでは「ロシアがまもなくNS1を通じたガス供給を完全に停止する」との見方が強まっている。NS1では、毎年夏にガス輸送を10日間止めて安全点検を実施する。今年の安全点検は、7月11日から始まる予定だ。つまりドイツ政府は「安全点検を終えても、ロシアはNS1を通じたガスの輸送を再開しないのではないか」と危惧しているのだ。
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