欧州連合(EU)加盟国は26日、ロシアからのガス供給が停止された場合に備え、ガス使用量を削減することで合意した。ただ、一部の国は例外的に削減目標の適用を避けられることになった。
合意では、EU加盟国は8月から来年3月までの間、ガス使用量を自主的に15%削減する。EUでは先週から、削減案について加盟国が話し合いを続けてきた。
削減は自主的だが、供給が危機的レベルまで減った場合、義務化される。
輪番制のEU議長国を務めるチェコは、「ミッション・インポッシブルではなかった!」とツイートした。
ただ、合意には例外規定が設けられており、それが無かった以前の案からは厳しさが弱まった。
EUは合意の目的を、冬に向けてガスを節約し貯蔵することだとしている。ロシアについては、「エネルギー供給を武器として使い続けている」と警告している。
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例外規定
EUのガス・パイプラインが接続していない国は、代替の供給源を確保できないため、削減の義務化からは除外されることになる。対象国はアイルランド、マルタ、キプロスなど。
ヨーロッパの電力網に接続しておらず、発電でガスに大きく依存しているバルト諸国も、電力危機を回避するため、強制的な削減目標の対象外となる。
また、ガス貯蔵量が補充の目安以下になった場合や、「重要」産業がガスに大きく依存している場合、過去1年間のガス消費量が過去5年間の平均を8%以上上回った場合にも、その国は削減の免除を要請できる。
アナリストからは、こうした除外規定は合意の意義を弱めるとの指摘が出ている。しかし、欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は、すべての除外規定が適用されたとしても、EU全体ではまだ、「安全に平均的な冬を越すのに役立つ」レベルまで、ガス需要を減らせる見込みだと述べた。
シムソン委員はまた、アゼルバイジャン、アメリカ、カナダ、ノルウェー、エジプト、イスラエルなどからのガス代替供給を強化する取り組みについて説明した。
ハンガリーが唯一反対
合意の発表に先立ち、ドイツのロベルト・ハーベック経済相は、「もちろん、この文書には多くの妥協が含まれている。これがヨーロッパのやり方だ」と説明。例外規定については、「問題を引き起こすかもしれない」が「合理的」だとした。
今回の合意に対しては、ハンガリーが加盟国で唯一、反対の立場を取った。
今回の合意は、ロシアのエネルギー大手ガスプロムが、パイプライン「ノルド・ストリーム1」のタービンを整備するためドイツへのガス供給量を再び減らしたと発表した後に、まとめられた。
同パイプラインは数週間前から、最大容量を大幅に下回って稼働している。ウクライナは、ロシアがヨーロッパに「ガス戦争」を仕掛けていると非難している。
ガスプロムは、ブルガリア、デンマーク、フィンランド、オランダ、ポーランドへのガス供給を全面的に停止している。支払いをユーロやドルではなく、ルーブルでするようロシア政府が指示したのを各国が拒んだのが理由。
ロシアは昨年、EUが使うガスの4割を供給した。ロシアがウクライナを侵攻して以来、欧州指導者らは、ロシア産の化石燃料への依存を減らそうと協議を重ねてきた。
EUは5月、海路で運ばれるロシア産の石油を年内に全面禁輸することで合意した。だが、ガスをめぐっては、合意まで長い時間がかかった。
イギリスはロシアからのガス輸入量が全体の5%未満なので、供給が途絶えても直接的な影響は受けない。ただ、ヨーロッパで需要が増し、世界市場の価格が上昇することの影響は受ける見通し。
チェコのジョゼフ・シケラ産業通商相は、今回の合意の発表に際し、「EUは結束し、連帯している」と述べ、こう続けた。
「本日の決定は、エネルギー供給を武器にEUを分断しようとするロシアの企てに対して、加盟国が堂々と立ち向かうことを明確にしている」
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ロシアがEUへの供給を完全停止することは「あり得るシナリオ」だと述べている。
ロシアによるウクライナ侵攻以来、ガスの卸売価格は高騰し、消費者が支払うエネルギー料金にも影響が及んでいる。
BBCのジェシカ・パーカー・ブリュッセル特派員は、今回の合意は妥協だらけのものだと解説。唯一反対したハンガリーについて、削減計画の実行に努めるかさえ疑問視されているとした。また、同国外相は最近、ロシア外相と会談し、ガスの追加供給を要請したと伝えた。
(英語記事 EU allows get-out clause in Russian gas cut deal)
提供元:https://www.bbc.com/japanese/62314974
からの記事と詳細 ( EU、 ガス使用15%削減で合意 ロシアの供給停止に備えるも例外規定も - WEDGE Infinity )
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