日本はロシアのウクライナ侵攻で深刻化したエネルギー供給の不安定化と、温暖化の影響とみられる災害の多発という2つの危機に直面している。日本経済新聞社はこれらを同時に解決する現実的な方策を見いだそうと、エネルギー・環境緊急提言をまとめた。
いま必要なのは、エネルギー安定供給の確保と、二酸化炭素(CO2)を極力出さない脱炭素の両立だ。成否は人々の暮らし、ひいては国力に直結する。実現には政治の強力なリーダーシップと国民の理解が不可欠だ。
日本はエネルギー自給率が低くロシア産天然ガスにも依存する。温暖化ガスを多量に排出する石炭火力発電の利用も多い。
政府は長期的視野でエネルギー・環境戦略を立て直す必要がある。持てる技術や手段を総動員し、脱炭素社会への移行を着実かつ円滑に進めなければならない。
足元では冬へ向けて暖房需要が高まり、エネルギー不足が深刻化する懸念がある。欧州では、これまで減らしてきた石炭火力の利用を再び増やす動きも出ている。
一方、温暖化が関係するとみられる激しい現象も相次ぐ。日本は強大な台風14号の直撃を受けた。パキスタンでは大雨による大洪水が発生した。夏には欧州が熱波に見舞われ農業が打撃を受けた。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界の平均気温が産業革命前に比べ1.5度以上高くなると、こうした現象がより起きやすくなる。すでに1度以上高く、温暖化ガス削減は待ったなしだ。
最優先すべきは、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入加速だ。送電網の大幅な拡充や、天候による出力変動に対応するための蓄電池の普及は急務である。
足りない分は、稼働中に温暖化ガスをほとんど出さない原子力発電や、脱炭素対策を施した火力発電で補う。
ただ、東京電力福島第1原発事故以来、原発への不安は根強い。そのうえ原発の建設には巨額投資が必要で、事故時の損害賠償責任も重い。事業者任せではなく、政府が前面に立って信頼回復と課題解決に臨まねばならない。
日本が当面、石炭火力を使い続けることには、各国から批判が多い。CO2の回収技術や、排出を抑える燃焼技術の普及により、途上国の排出削減も促せることを実績として示す必要がある。
からの記事と詳細 ( [社説]エネ供給と脱炭素の両立は待ったなし(写真=AP) - 日本経済新聞 )
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