英国の送電大手ナショナル・グリッドの電力系統子会社ナショナル・グリッドESOは10月6日、冬季の電力供給見通しを発表した。対象期間は2022年10月31日から2023年3月31日まで。
同社は、以下の3シナリオごとに見通しを発表した。
- ベースケース:欧州(フランス、オランダ、ベルギー)から電力を輸入できる場合
- シナリオ1:欧州から電力を輸入できない場合
- シナリオ2:欧州から電力を輸入できず、英国内のガス供給も十分でない場合
電力の予備率(注1)は、「ベースケース」の場合6.3%、「シナリオ1」では5.7%をそれぞれ確保するとした。一方、「シナリオ2」では、1月前半に燃料不足によりガス発電が稼働不可となり、予備力(注2)がマイナスとなる想定で、一部の世帯では1日3時間の計画停電となる可能性があるとした。
なお、「シナリオ1」「シナリオ2」には、政府が緊急時電源として確保した石炭火力発電所での発電(注3)および需要側の変動対策が含まれる。
「フィナンシャル・タイムズ」(10月7日)は、今回の見通しにより、家庭に節電を求める圧力が高まる可能性を指摘。しかし、グラハム・スチュアート気候変動担当相は、国民に節電は求めないとの見解を示した(「タイムズ」10月7日)。
また、ナショナル・グリッドは同日、冬季のガス供給見通しも発表。過去、冬20シーズン当たり1シーズンの割合で発生した、まれな最大ピーク日でも供給力を確保しているとした。この冬のガス供給は、英国大陸棚やノルウェーからの供給をメインに、液化天然ガス(LNG)が柔軟に補う主要供給源となり、需要が高まっている時のみ欧州から輸入するとした。また、ガス価格の高騰の継続の結果として、家庭用および産業用のガス需要は減少すると予測している。
英国政府は10月7日、ガス供給の緊急事態発生時に備え、ガス供給事業者に対し、優先供給する顧客などの順位付けの見直しを指示した(プレスリリース)。
(注1)ピーク時の需要(100%)に対して、どれだけ供給余力があるかを示す割合。
(注2)供給力からピーク時の需要電力を差し引いた余力電力(単位:ギガワットなど)。
(注3)政府は2022年6~9月に複数の電力会社と、廃止予定だった石炭火力発電所を2023年3月末まで稼働延長すると合意(2022年7月8日記事参照)。9月22日にはドイツエネルギー大手のユニパーが、同月末に一部廃止予定だったラトクリフ・オン・ソア発電所を2023年3月末まで稼働延長する旨で合意。
(菅野真)
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