中国では鉄鋼メーカーの過剰生産が鋼材価格の値崩れを招いている(写真は国有鉄鋼大手、河鋼集団のウェブサイトより)
「最近の鋼材価格の下落ぶりは尋常ではない。中国の鉄鋼業界にとって、供給過剰が引き起こした需給のアンバランスは目下最大の問題だ」。中国鉄鋼工業協会のチーフエコノミストを務める王頴生氏は、同協会が4月26日に開いた2023年1〜3月期の業界指標の説明会でそう述べた。
代表的な鋼材価格の動きを見ると、(建物の鉄筋などに使われる)異形棒鋼の上海先物取引所での先物価格は4月25日に1トン当たり3700元(約7万1600円)を割り込み、2023年の最低記録を更新した。異形棒鋼の値下がり幅は、4月以降だけで10%を超えている。
鉄鋼メーカーにとって、市場価格の急落が業績にマイナスなのは言うまでもない。中国鉄鋼工業協会のまとめによれば、主要鉄鋼メーカーの1~3月期の利益総額は159億6800万元(約3090億7500万円)と、前年同期比71.5%も減少した。
さらなる値崩れのリスクも
留意すべきなのは、中国の鋼材需要は相対的に堅調であることだ。1~3月期の見掛け粗鋼消費量(訳注:粗鋼の国内生産量に輸入量を加え、輸出量を差し引いた値)は約2億4300万トンと、前年同期比1.9%増加。前出の王氏の分析によれば、1~3月期の増加率は事前予想を上回っており、政府のインフラ投資や製造業の事業投資が支えになったという。
「今後について気がかりなのは、不動産業界の動向だ。不動産開発プロジェクトの2023年の新規着工面積が12億~13億平方メートルに達すれば、鋼材需要の下支えになる」(王氏)
そんななか、市場価格急落の主因になっているのが鋼材の過剰生産である。中国の1〜3月期の粗鋼生産量は2億6200万トンと、前年同期比6.1%増加。そのうち3月の1日当たり平均生産量は309万トンと、同月としては過去最高水準を記録した。
本記事は「財新」の提供記事です
仮に3月のペースで生産を続ければ、2023年の年間生産量は前年より1億トン以上増えることになりかねない。そこまで大量の供給を消化する余力は需要側にはなく、「市場価格のさらなる値崩れを招いてしまう」と、王氏は警鐘を鳴らす。
(財新記者:郭霽瑩)
※原文の配信は4月26日
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