ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの相次ぐ不祥事に端を発した薬の供給不足が、3年以上たった現在も解消されていない。佐賀県内の薬局や医療機関は現場でやりくりする状況が続いており、「これほど不足が長引くのは初めて。国は供給安定に向けて根本的に取り組んでほしい」との声が上がっている。
佐賀市内で3店舗の薬局を経営する薬剤師の宇都宮圭さん(52)は「全く入荷できないわけではないが、普段以上に処方が出た場合は足りなくなる」と語る。扱う約1200品目のうち、解熱鎮痛剤やせき止めなど約200品目が不足気味で、付き合いのある薬局に電話をかけて薬を融通し合うことから一日が始まる。窓口で患者に一部しか手渡せず、残りを自宅まで届けるのも日課になった。
2020年末から相次いで発覚したメーカーの不祥事で供給が滞り、新型コロナウイルスの感染拡大による需要増なども不足に拍車をかけた。日本製薬団体連合会(日薬連)の今年3月の調査では、回答があった1万6984品目中、供給停止など通常出荷ができていないのは23・9%の4064品目。宇都宮さんは卸業者との交渉について「新規の発注は断られ、既存の注文も一度量を減らすと元に戻せない」と話す。
厚生労働省は4月から、即時性のある供給状況をウェブサイトで公表し始めた。宇都宮さんは「今のところは使っていない。卸業者とやりとりする方が実用的な情報を得られる」とし、「国は供給不足に対する根本的な対策を」と注文する。
人口10万人当たりの薬局数が63・8(22年度末)と、全国で最も多い佐賀県。比較的小規模な薬局も多く、仕入れに強い大手チェーンより供給不足の影響を受けやすい。医師が処方箋を交付し、薬局の薬剤師が調剤を担う「医薬分業」が盛んな地域でありながら、薬不足で制限を受けている。
小城市の江口病院では、薬局側の求めで処方を変更し、他の薬との飲み合わせを確認する対応が生じている。江口有一郎理事長(54)は「せき止めなど日常診療で使う薬が足りず、使い慣れていないものを処方せざるを得ない。『これでも効くから飲んで』と言われる患者にも不利益で、最高の安全安心を届ける立場として残念」と話す。
院内処方をしている佐賀市休日夜間こども診療所では、小児用の薬が不足している。インフルエンザが流行していた昨秋、大人用のカプセル剤の中身をドライシロップにして提供したところ、「苦くて飲めない」と苦情が寄せられた。年末年始には、ぜんそくの発作を起こした子どもが受診したが、在庫が切れて飲み薬を処方できなかった。卸業者に代替薬を頼むと「納入実績がないところには卸せない」と断られた。
同診療所で交代で診療する小児科医らの代表で、県小児科医会会長の島田興人さん(60)は「供給量が戻らない今、感染症が落ち着くなど需要が減ることしか解決策がない。国は製造段階にしっかりと関わり、供給の安定化に責任を持つべき」と指摘する。(円田浩二)
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