ウチダエスコが、月間2万台のPCをキッティングできる「ESCO(エスコ)船橋-BaySite(ベイサイト)」を、2020年3月から本格稼働させている。
ESCO 船橋-BaySiteは、これまで稼働させていた船橋キッティングセンターと、浦安リペアセンターの2つの拠点を統合。新たに1665坪(約5500m2)の施設で運用を開始したものだ。
月間2万台のキッティング能力は、従来の2倍に達し、併設している倉庫エリアも約1.8倍に拡張して、ノートPCであれば4万台もの保管が可能になっている。
これにより、在宅勤務の増加によって求められているリモートワークに最適化したPCの提供や、GIGAスクール構想による児童生徒1人1台のPC整備に向けた教育向けPCの供給において、重要な役割を果たすことになる。
情シス管理者の負担を低減する、キッティングとは何か?
PCのキッティングとは、企業や教育機関、団体などが導入するPCに対して、使用する環境や要求するスペックにあわせてカスタマイズする作業を指す。情報システム部門やシステムインテグレータは、社員のPCごとに現場で設定作業を行ったりすることがなくなり、社員は新しいPCが会社から貸与されても、すぐに利用できる環境が整うことになる。
キッティングサービスの範囲は多岐に渡る。
ウチダエスコで対応しているのは、企業などが用意したマスターをイメージファイルとして、それぞれのPCにクローニング。PCのBIOSを設定したり、ドライバーやアプリケーションソフトをインストールしたり、Windowsの初期設定、IPアドレスやネットワークの設定などのほか、旧PCからのデータ移行もする。メモリーの増設やSIMカードの装着などのハードウェアの構成変更もメニューとして用意している。
さらに、PCに管理用のシールを貼付したり、情報システム部門などが用意した独自のマニュアルを同梱する作業をする一方、メーカーが同梱するマニュアルや説明書を取り除いたり、梱包箱が不要な場合にはそれを廃棄する。実際、一人に一冊ずつのマニュアルはいらないという企業も多く、導入台数分のマニュアルの処理に困るケースも少なくない。同梱品を抜き取って、廃棄するというのも、キッティングのなかではよくある作業のひとつだ。
また、企業などの導入のタイミングにあわせて、指定された納期に収めたり、それまでの期間は在庫として保管したりもする。PC本体とディスプレイをはじめとする周辺機器を組み合わせて同時に出荷するという作業もキッティングで求められる要素のひとつだ。
ウチダエスコの江口英則社長は、「もともとは、旧船橋キッティングセンターの建物の契約が更新時期を迎えていたのが移転計画の発端。今後の発展を目指すためには、新たな場所に移転する必要があると考えていた」とする。
2019年度は、Windows 7のサポート終了に伴う特需もあり、夜間も稼働させる形で、月間1万台のキッティング作業を行ってきたが、従来の施設では、それ以上の拡大には限界があり、新たな物件を探していたという。
そうした動きが進められるなかで、政府はGIGAスクール構想により、全国の小学校、中学校、高校、特別支援学校において、児童生徒1人1台のPCを整備することを発表。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務が一気に広がり、リモートワークに最適化したPCの導入を行う企業が増加。早くも、ESCO 船橋-BaySiteを稼働させた効果が生まれようとしている。
江口社長は、「いくつかの物件をあたった結果、この物件に巡り合えた。これはとてもラッキーなことであり、このタイミングで本稼働できたことも大きな意味があった」とする。
300台の在宅勤務用のPCをキッティングしてほしいという案件もあったというが、ESCO 船橋-BaySiteの本稼働によって、そうした突然の一括導入案件にも対応できたという。
現在、ESCO 船橋-BaySiteでは、新型コロナウイルスへの感染対策として、一部社員は時差出勤とし、1作業レーンあたり作業人数も3人以下に限定。稼働率は通常時に比べ50%~60%となっている。販社が顧客訪問などの営業活動を自粛しているため、キッティング作業は減少したり、延期傾向にあるが、そうしたなかでも、テレワーク環境の整備に関する引き合いが発生。追加依頼や仕様変更などの需要は増えているという。
キッティングについての独自のノウハウを披露
ウチダエスコは、1972年に設立した内田洋行グループの1社で、全国33ヵ所の営業所およびフィールドサービスステーションを持ち、約600人の社員数を誇る。2019年7月期の売上高は136億円。様々なメーカーの製品を取り扱い、保守する「トータル保守サービス」、LANの構築や導入後のサポートも提供し、最適なネットワーク環境を提供する「ネットワーク総合サービス」、多岐に渡る業種をカバーし、企画、設計から運用、保守に至るまでトータルで提供する「ソリューションサービス」、オフィス空間の設計から内装工事、オフィス機器の販売などを行う「オフィスシステムサービス」の4つの事業の柱としている。
また、ウチダエスコの100%子会社であるアークは、ESCO 船橋-BaySiteの運営を行っており、キッティングだけでなく、保守サービスでの長年の実績を持っているのが特徴だ。
アークは、アークは、1991年11月に、アップルのPowerBookシリーズの専門メンテナンス会社と創業。1998年にはアップルの全製品に対象を拡大。これまでに、主要PCメーカーや周辺機器メーカーにも、保守サービスの展開している。
社名のアークは、「アップルリペアセンター(ARC)」を語源としているが、現在でもApple正規サービスプロバイダとして修理事業を継続。その他のメーカーの製品の修理業務を行うなど、メーカーから高い信頼を得ていることがわかるだろう。
ESCO 船橋-BaySiteでも、これまでのノウハウを生かして、キッティングを行える体制を構築した。
キッティングは、4段の棚によって構成される「作業レーン」で作業が行われ、ノートPCの場合には、中央の2段に作業を行うPCを配置。その上下の棚には、梱包箱や同梱する付属品などを用意する。1レーンあたり24台のノートPCを置くことができ、1つの作業レーンで、2~3人で作業を行うことになる。
作業レーンは、40レーンまで設置。旧船橋キッティングセンターでは、12レーンだったことに比べると、3倍以上の作業レーンを用意している。
「昼間の稼働だけで、従来のキッティングセンターの2倍となる月間2万台の処理能力を持つが、もし夜間も稼働させれば、最大で月4万台の処理も可能になる」と、アークの藤岡伸吉社長は語る。
そして、ESCO 船橋-BaySiteの本格稼働とともに、強化しているのが「HEZ(ヒューマンエラーゼロ)」への取り組みだ。
これまでの施設に比べて、作業や保管ができる面積が広がったことで、管理がしやすくなったこと、移転にあわせて、キッティングの管理体制を独立させ、品質管理部門を新設。また、出庫だけを管理する専任スタッフを新たに配置して、管理責任を明確にした。
アークの藤岡社長は、「HEZを実現できる環境が整った」と語るように、移転以来、HEZを実現している。
「お客様のなかには、PCは他社から調達しても、キッティングだけはウチダエスコに任せたいという声を数多くいただいている。これは、長年の信頼によるものだが、エラーひとつでお客様の信頼を失うことになる。品質を第一に考え、そのうえで、処理能力の向上を図っていく」とする。
ESCO 船橋-BaySiteは、キッティングエリア以外にも多くの特徴を持つ。
たとえば、倉庫エリアは、3段の保管ラックを導入。最大400パレット分の保管スペースを確保し、ノートPC換算で4万台を保管。搬入出エリアは、同時に9台の10tトラックが停車可能であり、PC本体と周辺機器を組み合わせた迅速な出荷が可能だ。
あわせて、ESCO 船橋-BaySiteの稼働とともに、新たに倉庫業免許を取得。ウチダエスコの江口社長は、「安全に保管する環境であることを対外的にも発信するとともに、今後は、倉庫業としての新たなビジネスにも乗り出すことができる」とする。
一方、リペアエリアは、PCやタブレット、スマホ、3Dプリンタをはじとめする周辺機器を修理。特定PCメーカーの修理にも協力しており、その作業向けの専用のエリアも用意している。年間約1万6000台の修理が可能だ。
ライフサイクルエリアは、同社が提供する「PCライフサイクルマネジメントサービス」をサポートするエリアで、キッティングだけでなく、交換用機材の在庫や資産管理、廃棄までを行う。
セキュリティエリアは、キッティングエリアとは分離した顧客専用スペースであり、他の企業の作業から隔離し、セキュリティを確保した形で、キッティング作業をする。最大4区画に分けて利用することができる。また、ネットワーク・サーバーエリアでは、セキュリティエリアと連動する形で、顧客ごとの専用回線を用意しており、ここでも、一般に使用する回線とは分離した形で、キッティング作業などに必要なデータなどを展開できるようにしている。これらのエリアは、顔認証や暗証番号の設定などにより利用者を特定し、それ以外の人は入れないようにしている。
交通の利便性の良さは雇用面でも功を奏する
そして、ESCO 船橋-BaySiteは、三井不動産ロジスティクスパークの最新施設である「MFLP船橋Ⅱ」のなかにあり、従業員はJR京葉線南船橋駅から徒歩約5分で入口まで到達でき、施設内にあるラウンジや無人売店、スカイデッキ、携帯電話ブースなどのほか、保育施設やカフェテリア、コンビニエンスストアなどの敷地内の設備も利用できる。
「従来の船橋キッティングセンターは、最寄り駅から徒歩で約30分かかり、クルマでしか移動手段がなかった。また、浦安テクニカルセンターは東京メトロ東西線浦安駅からバスに乗り換えて行く必要があった。ESCO 船橋-BaySiteでは、こうした課題が解決できる拠点でもあり、従業員が働きやすい環境を実現した」と語る。
そして、これは雇用面でも大きなメリットがある。
「高い品質のITサービスを提供するために、優れたエンジニアの確保することが大切である。ESCO 船橋-BaySiteは、優秀な人材を獲得するという点でも効果がある」と江口社長は語る。
ESCO 船橋-BaySiteに移転後、すでに約10人を正社員として採用。今後150人体制にまで拡張する予定だという。
一方で、キッティングにおけるクローニング作業を自動化するなど、生産性を高める設備への投資を進める考えも示す。
「ウチダエスコならではの小回りの良さを生かして、企業や教育分野のニーズに応えることができるキッティングの体制を敷きたい」と江口社長。
ESCO 船橋-BaySiteは、まさに同社にとっての戦略的拠点。新型コロナウイルスの影響で、改めて本稼働の時期を模索することになるが、今後の同社の成長を支える拠点になるのは間違いない。
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April 22, 2020 at 05:12PM
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