日本企業のグローバル化は、ICTの革新から勢いが衰えない。
それも当然だ。研究開発や生産、販売などの国際分業の意義については、改めて多くを説明するまでもないだろう。とりわけコスト削減メリットは日本の“お家芸”のモノづくりで大きく、製造拠点の海外進出は一定以上のメーカーにとって当然のものとなっている。
そうした中、グローバルでの資産管理の統一化ニーズはこの10年来、関心が高まっている。背景には、共通化による「資産状況の可視化」があり、次のようなメリットがある。
まず、グローバルでの各種レポートにまつわる業務効率化だ。商慣習や税制の違いから、同一対象を異なる勘定科目で処理することが多い。レポート作成の際には、資産の詳細について現地へ情報提供を求めることになるが、意図が伝わらず何度もやり取りが生じることもしばしばだ。
同一の管理ルールで、同一のシステムを使い、ネットワーク経由で現地データにアクセスすることで、必要な都度、容易に情報を入手でき、煩雑なやりとりを一掃できる。加えて、海外現地の固定資産を含めた償却費のシミュレーションを可能とすることで、経営管理の高度化も可能だ。最後に、目の届きにくい海外資産にも常時、目を光らせることができ、本社のガバナンスを高めることが可能となる。
ルール統一を支援する機能群で158社がグローバル採用
もっとも、資産管理ルールの共通化のためには、ルールやシステムなどの新たな仕組みを海外拠点で導入/整備することが必要だ。とはいえ、それが一筋縄ではいかない。そうした困難な取り組みをシステム面から支援してきたのが、固定資産管理システムで国内を牽引(けんいん)してきたプロシップである。
プロシップのシステム営業本部 副本部長 営業1部・海外ビジネス営業部で部長を務める木本彰祐氏は、「大手ERP製品は、各国の言語や通貨には対応できても、税制に合わせた償却計算を行うためには、個別のカスタマイズが必要となっており、グローバル統一するには、相当のコストが発生してしまっていました。そこでの不満の声から、固定資産管理の専業ベンダーとして顧客の要望に応えるべく、各国の税制対応を当社の固定資産管理システム『ProPlus』に随時追加し、グローバルでの固定資産管理ルールおよびシステムの統一支援にいち早く取り組んできました」と説明する。
この取り組みを評価され、中国やASEANを皮切りに海外子会社での利用が進み、今では20の国と地域、158法人で採用されている。
一方で、資産管理方法の統一ニーズの背景には、会計制度の変更といった“外部”要因も大きいと木本氏は指摘する。19年1月以降の開始事業年度から強制適用が始まったIFRS16号だ。
IFRS16が固定資産管理のグローバルルールに
IFRS16の一番の“肝”は、借り手リース契約すべてのオンバランス化を原則として求めている点だ。国内では従来、OA機器や社用車などの動産リース、さらに事務所や店舗などの不動産リースなどをオペレーティングリースとして費用処理していた。それらすべてがオンバランス化の対象となり、管理対象が一気に拡大することへの対応が大きな課題となった。
ただ、資産管理統一の観点で、それ以上のインパクトをもたらしたのが、各種の判断基準について、企業グループ全体の統一を求められたことだ。
例えばIFRS16には「契約期間が1年未満の短期リース」と「少額資産」の2つを対象にしたオンバランス化の免除規定が存在する。また、免除規定とは別に、事業活動における重要性の観点から、監査法人との合意があれば、借り手リース契約であってもオンバランスの対象外にできる。ただし、その判断がグループ各社でバラバラであれば、統一性の欠如としてガバナンスの不備と認識され、財務諸表の信頼性が大きく毀損(きそん)することで企業価値に少なからぬ影響を与える可能性も高いのである。
IFRSによるグローバルでの厳格な基準統一は、現場に変化を強いる厄介な作業だ。「ただし、資産管理の共通化でも同様のルールの統一は欠かせません。言い換えれば、IFRS対応を通じてそのための厳格なルールを導入できるのです」(木本氏)
IFRS16の適用を通じて、その認知が広がってきており、IFRS16のバランスシートに与える影響の大きさから、流通や倉庫、物流など、多数の賃貸契約を現地で結んでいる製造業以外の企業でも、固定資産管理方法の統一機運が盛り上がっているのである。
連結決算の作成でIFRS未適用企業も対応が必須に
IFRSに関しては、別の観点からも動向が注目されている。背景にあるのが、ASBJが19年に公表した改定実務対応報告18号だ。
そこで示されたのは、連結財務諸表作成における在外子会社などの会計処理に関する当面の取り扱いについて、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならない」(連結会計基準17項)こと、さらに「当面の間は『IFRS』ないしは『米国会計基準』に準拠して作成された財務諸表を連結手続き上利用できる」(実務対応報告第18号)ことだ。つまりは、IFRS16の適用先が、国内で適用済みの上場企業に加え、連結対象の海外子会社を持つ上場企業にまで一気に拡大したということである。
実務においては、それが実に厄介だ。本連載でも解説してきた通り、IFRS16対応はあらゆるリース資産を洗い出すための業務プロセスの見直しや、厳格な会計処理のためのシステムの見直しが伴う。強制適用の開始後、そうした困難な作業で実務の煩雑さに改めて気づき、現在進行形でシステムの改修に乗り出す企業も少なくない。対応は国内本社だけでなく海外拠点にも当然求められ、文化や言葉が異なる中での作業となれば難しさはさらに増す。
こうした状況にあって、果たしてどう対応を進めるべきか。そうした悩みを抱える企業に対する木本氏のアドバイスが、「ノウハウ」と「ルール」が詰め込まれた固定資産パッケージの採用だ。
「IFRS16によるリース資産の管理はほとんどの企業にとって初めてのことになります。海外拠点にとっては、なおさらです。高い精度でリース資産を把握/管理するには、IFRSによる固定資産管理のノウハウが集約された、すでに存在する仕組みの利用が安全かつ確実で最短の道となります」(木本氏)
このような状況下で海外リース管理のニーズが大きくなり、プロシップは、固定資産管理に続き、リース資産管理システムのグローバル対応を決め、2019年9月に海外対応版をリリースしている。
各国の契約内容の違いも踏まえた処理機能も実装
プロシップのProPlusは、IFRS16対応で真っ先に候補に挙がる製品の1つである。ProPlusは、動産リースと不動産リースの双方を管理するための「対象範囲」や、日本を含めた現地とIFRSの双方の基準で管理するための「複数帳簿対応」などの、IFRS16での対応で求められるすべての要件に高い水準で対応している。
例えば、IFRSではリース料やリース期間の変更に伴い、リース債務の再測定作業が発生するが、そのための「再測定時点における変更後のリース料総額や、リース期間に応じた割引計算」「再測定事由により使用する割引率の設定」「再測定前の金額との差額を踏まえた帳簿価格の修正」「再測定日を起点とする残存期間での償却や利息の計算」など、ProPlusは必要な機能を網羅している。
「中国では契約時に、更新時の賃料上昇率が規定されていたり、インドでは賃料が毎年変動し、契約更新時の交渉により改めて決まったりなど、リース契約の内容も国ごとにさまざまです。ProPlusはこれらの取引に対応できる機能を実装しており、違いに柔軟に対応できます」(木本氏)
そのうえで、プロシップではこれまでの豊富な経験とノウハウを基に、プロジェクトの進め方やシステム対応のポイントなど、幅広く相談に乗ることで導入を支援することが可能である。最終的なIFRS対応の暁には、ルールと手段の双方が整備され、固定資産管理のグローバル統一に容易に乗り出せるようになる。
こうした変遷を経つつ、「固定資産管理方法の統一化における企業の狙いが、ここにきて質的に大きく変わりつつあります」と木本氏は語る。
「グローバル資産管理の目的が、『本社の管理機能の強化』から、『収集した情報に基づく意思決定の高度化』に移りつつあることを各種の問い合わせから肌で実感しています。拠点ごとに資産を見える化することで投資抑制を図ったり、固定資産の活用度から縮小や徹底の判断をしたりと、より深い経営判断に用いるケースが徐々に広がっているのです」(木本氏)
その意味するところはグローバル競争の激化により、固定資産情報も生き残りの“術”の1つとなっていることだ。グローバルで固定資産管理方法を統一化のための機能とIFRS対応のための豊富な機能、さらに、ニーズに寄り添った機能改善の実績により、プロシップは新たな企業の取り組みを今後も精力的に支援する。
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