海外では既に1億人が接種した新型コロナウイルスのワクチン。厚生労働省の専門部会が12日、米ファイザー製ワクチンの承認を了承したことで、国内でも来週から接種が始まる。医療従事者、高齢者と接種を順調に進めるには、安定したワクチン供給と接種体制の整備にかかっている。(井上靖史、藤川大樹)
◆審査わずか2カ月のスピード承認
米ファイザーは昨年12月18日、厚労省にワクチンの承認申請をした。通例、審査には1年ほどかかるが、今回は優先審査が行われたほか「特例承認」が認められ、2カ月という「スピード承認」の運びとなった。
それでも、欧米より動きは遅い。ファイザーは昨年11月18日、海外での4万人以上を対象とした治験で、有効性と安全性を確認したと発表。ただちに欧米で申請し、英国は約2週間後に承認を、米国は約3週間後に緊急使用を許可した。
「遅い」理由を、厚労省幹部は「日本人のデータに基づく検証が必要だから」と説明する。海外とは感染状況やウイルス株、食生活などが異なる。昨年9月、ワクチンの承認審査をする独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)は原則、国内治験が必要とする指針を公表。ファイザーは国内で160人を対象に追加の治験を行い、1月末にデータを提出した。
◆政府の説明、二転三転
正式承認は14日の予定。17日にも医師らへの先行接種が始まるが、ワクチン供給の先行きは不透明だ。当面、供給を頼る欧州連合(EU)では域内分のワクチンが不足し、現在、輸出は承認制になっている。12日、承認された第1便の「40万回分」が成田空港に到着したが、第2便以降は未定だ。
政府はこれまで、ワクチン供給の説明を二転三転させている。ファイザーからは1億4400万回分の供給を受けるが、基本合意の段階で「6月末まで」となっていた時期が、先月の正式契約で「年内」に延びた。最近、1瓶当たりの接種回数は注射器の形状の問題で、6回から5回に減るという説明に変わった。
◆接種を受け持つ市町村はいら立ち
河野太郎行政改革担当相は10日、「もう少し日程を絞ってお伝えできるようにしていきたい」と語ったが、開示される供給についての情報は乏しい。日本医師会の中川俊男会長は「情報が
4月からの高齢者への接種を受け持つ市町村はいら立っている。いつワクチンが手元に届くかはっきりしないため、接種会場に使う公共施設の予約、接種を担う医師や看護師らの調整もおぼつかない。
感染状況も4月の段階では今以上に抑えておく必要がある。ワクチンを保管する医療機関のほとんどが、コロナ重症患者の診療もしており、脇田隆字・国立感染症研究所長は「ワクチンの接種も医療機関の役割。今後の接種に向け、医療機関の負荷を減らしていくことが重要」と話している。
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