
今年夏と冬の電力需給の見通しが厳しくなっている。電力不足は命に直結する問題で安定供給に向けた対策は急務だ。ただ安易に原発再稼働への動きに転化しないよう強くくぎを刺す必要がある。
梶山弘志経済産業相は今月中旬の会見で夏と冬の電力需給が厳しいとの見通しを示した。需給調整を行う電力広域的運営推進機関も、需要に対する供給余力を示す予備率が来年二月には全国平均で安定の目安である8%を下回ると予測している。
コロナ禍による在宅時間の増加に伴い、夏冬の冷暖房はより欠かせない存在となり電力需要も増える可能性が高い。電力不足が原因で大規模停電が起きれば命に関わる問題となる。直ちに対策を練るべきだ。
電力不足の背景には電力小売りの自由化がある。競争が激しくなり各電力会社がコスト減に向け老朽化した火力発電所を相次いで休廃止したため供給能力が落ちた。
さらに温室効果ガス削減が加速する中、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない液化天然ガス(LNG)の争奪戦が激化していることも事態に追い打ちをかけている。
電力会社側には火力発電所の休廃止や補修のタイミングを需要のピーク時からずらし、供給能力の低下を抑制するよう要請したい。その上で各社間の電力融通網の再強化を図ってほしい。
一方、LNGの調達は民間だけでは限界がある。関係省庁と企業が連携した官民一体型のエネルギー外交の強化を求めたい。
企業や家庭も一層、節電せざるを得ないだろう。ただ高齢層の冷暖房にしわ寄せがいく状況だけは絶対に避けるべきだ。
電力行政を所管する経済産業省は二十五日、有識者会議を開き、節電の呼びかけを含めた対応策を議論した。
節電の議論は当然だが、電力不足への対応が原発再稼働につながらないよう厳しくチェックすることも必要だ。
太陽光や風力など再生可能エネルギーによる供給は依然、軌道に乗ったとは言い難い。しかし原発の安全性と経済的効率性が否定される一方、化石燃料使用への批判も強まり、再生エネは未来へ向かう唯一残された道だ。
足元の電力不足について、政府は国民への素早く正確な情報開示を続けるべきだ。
同時に改めて再生エネ戦略の構築に本腰を入れるよう強く期待したい。
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