政府が新型コロナウイルスの感染拡大でワクチンの確保が課題になっている台湾に対し、国内供給用に調達する英製薬大手アストラゼネカのワクチンの一部を提供する方向で検討していることが分かった。複数の政府・自民党関係者が27日、明らかにした。日本国民への接種は他社製でまかなえる量を確保しており、影響はない見通し。日本と台湾は大規模災害などの際に相互に助け合っていることも踏まえ、今回は緊急措置として支援が必要と判断した。
政府内では、ワクチンを共同購入して途上国にも分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて台湾に供給する案が浮上している。今後、台湾当局から必要な供給量や提供時期などを聞き取った上で詳細をつめる。早ければ来月にも提供の実現を目指す。
台湾の蔡英文総統は26日、一部の海外製薬会社からのワクチン購入に関し、中国の介入で今も契約できていないことを明らかにした。感染が急拡大する中、中国の妨害の影響もあり、人口約2300万人に十分なワクチンを早期に調達することが困難になっている。
政府は米製薬大手ファイザーのワクチンを年内に1億9400万回分(9700万人分)、米製薬会社モデルナ製を9月までに5千万回分(2500万人分)契約した。両社のワクチンだけで約2・4億回分(約1・2億人分)となり、16歳以上の接種対象者のほぼ全員分を確保している。
一方、アストラゼネカ製については、年内に1億2千万回分(6千万人分)の供給契約を結んだが、海外で接種後にまれに血栓が生じる事例が報告され、当面公的接種の対象外となった。今後も使い道が決まらなければ、保存期間を迎える可能性も出ている。
日台の相互支援の歴史は長い。平成23年の東日本大震災では、台湾から日本への義援金が200億円超にのぼった。昨年4月、新型コロナの感染拡大に伴うマスク不足の際には台湾から医療用マスク200万枚が送られた。
2016年の台湾南部地震では、日本政府が100万ドル規模の支援を表明した。18年の台湾東部地震では、行方不明者の救出を支援する専門家チームを派遣した。
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