新型コロナウイルスのワクチンを途上国が十分に確保できていない中、WTO=世界貿易機関では、供給を拡大するためにワクチンの特許権を一時的に停止すべきかどうか協議されています。
これについて、アメリカ政府は、これまでの方針を見直して特許権の停止を支持すると表明し、協議が前進するか注目されます。
ワクチンに関する特許権の扱いは、現在、WTOで議論されていて、南アフリカとインドが低価格のジェネリックワクチンを自由に生産できるよう、特許権を一時的に停止することを提案し、ワクチンを十分に確保できていない途上国の間で支持が広がっています。
これに対して、ワクチンを開発した大手製薬会社を抱えるアメリカやヨーロッパなどの先進国は、特許権を停止すれば将来の技術革新に支障が出るとして慎重な姿勢を示し、協議は難航しています。
こうした中、アメリカのバイデン政権で貿易政策を担当するタイ通商代表は、5日に発表した声明で「パンデミックを終わらせるために特許権の停止を支持する」と述べ、これまでの方針を見直すと表明しました。
ただ、WTOは全会一致が原則で、タイ通商代表は「問題の複雑さを考えれば、交渉には時間がかかる」とも指摘しています。
世界でワクチン普及の格差が開き、途上国の反発が強まる中、今回、アメリカが歩み寄ったことでほかの先進国も特許権の一時停止に賛同し、停止の方向に協議が進むか注目されます。
WHOは歓迎の姿勢
新型コロナウイルスのワクチンの供給が途上国を中心に依然として十分でない中、テドロス事務局長はことし3月の会見で、世界各地で広く生産できるようワクチンに関する特許権の保護を一時的に停止すべきだと主張していました。
ワシントンではワクチン供給拡大求めるデモ
集まった人たちは「皆にワクチンを」などと書かれたプラカードを手に、感染拡大を抑えるためにはワクチンにかかわる特許権の保護を一時停止させ、途上国でもワクチンを生産できるようにしなければならないなどと声を上げていました。
デモに参加したインド系アメリカ人の女性は「アメリカには大きな責任がある。他の国でもワクチンが生産できるようにするためにワクチンの特許を開放すべきだ」と話していました。
製薬会社などの団体「間違った解決案」
さらに「ワクチンの特許を停止しても生産量が増えるわけでも、世界的な健康危機に立ち向かう実用的な策を提供するわけでもない」として、貿易障壁の解消やワクチンの原材料不足などの課題から目をそらすことになり、逆に混乱を招くおそれがあると指摘しています。
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