新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り全国に混乱が広がっている。国によるワクチン供給の減少が要因だ。 必要な量が届かないとして、住民接種の予約受け付けを停止したり延期したりする自治体が相次いでいる。既に予約が入っていた1回目の接種をいったんキャンセルすると発表した市もある。 県内でも希望する量と供給される量との間に大きな開きが生じた。7月19日から2週間分の市町村向け米ファイザー製ワクチンの供給量は110箱。県側が国に希望した約200箱の半分にすぎない。 集団接種の停止を余儀なくされた町があるほか、多くの自治体で64歳以下へ打てる時期の見通しが立っていない。 県が那覇クルーズターミナルに新設する3カ所目の広域接種センターも、予定していた15日開始は厳しいという。 スピード重視で突き進んできたワクチン接種は、ここへ来て水を差され、住民にしわ寄せが及ぶ事態となった。 国は自治体に配送済みで、まだ打たれていない「市中在庫」がかなりあるとみて融通するよう求めている。 しかし自治体配分のファイザー製ワクチンは3週間の間隔で2回打つのが基本だ。自治体側からすれば1人に必要な2回分を確保できなければ、1回目の接種も進めにくい。融通には限度がある。 「7月末までに高齢者接種を完了させる」「10~11月に希望者全員分を打ち終える」。ワクチン接種をコロナ対策の切り札とする菅義偉首相の発言を受け、自治体は接種態勢を拡充させてきた。在庫状況を詳しく調べるなど混乱収拾に努めるのは国の責務だ。 ■ ■ 企業や大学が対象の職場接種も暗礁に乗り上げている。 申請が殺到し、使用する米モデルナ製ワクチンの供給が追い付かなくなった。本格開始からわずか2日後、受け付けの一時停止が示され、再開のめどは立っていない。 職場接種は医師や会場を自前で確保することや千人以上の規模が要件だったため、中小企業には不利な仕組みになっている。 大企業がいち早く申請に動いた一方、中小企業がまとまって苦労の末に医師を確保した時には既に受け付けは停止していた、という事態が各地で見られた。反発の声が上がるのは当然だ。 気になるのは、あおるような姿勢で接種の加速化を促しながら、途中ではしごを外す国の場当たり的な対応である。見通しの甘さが混乱に拍車を掛けていることを認識してほしい。 ■ ■ 河野太郎行政改革担当相の安定性を欠いた発言も不信感を招いている。 モデルナ製ワクチンについて、6月末までに4千万回分の供給を受ける契約があるとの一部報道に対し「完全に誤報だ」と強く否定し、後日一転して認めた。一方で調達したのは契約分の半数以下にとどまったとも明らかにした。 供給量が変われば調整が必要になり自治体の負担も増す。どれだけ供給できるのか正確な情報の提示が求められる。必要量の確保も急ぐべきだ。
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