イギリスでガソリンスタンドに長い列ができている。トラック運転手が不足し、ガソリン供給が滞るとの不安が広がっているためだ。異常事態4日目の27日、政府は事態改善のため、軍の出動を準備していることを明らかにした。
必要に応じて、最多150人の軍の輸送車両運転手が最長5日間の特別訓練を受け、出動する見通し。同数の支援スタッフも、軍から派遣される用意があるという。
クワシ・クワルテング・ビジネス相は、支援要請に即応できるよう軍を待機させるのは、「思慮深い、予備的対策」だと述べた。
ガソリンスタンドには多くの人が詰めかけているが、製油所では十分な量のガソリンが確保されている。石油大手のBPやシェルは、供給元に変化はなく、需要の急増は近いうちに収まる見込みだとしている。
グラント・シャップス運輸相は、「より多くのガソリンスタンドでさまざまな種類の燃料が手に入れられるようになっており、パニック買いする人が減ってきている」と話した。
価格を上げる販売業者も
イギリスでは、トラック運転手が10万人以上不足すると見込まれている。そのため、食品やスーパーなどの幅広い業界で問題が生じている。
政府は、必要のない人がガソリンを買い求めていることが、今回の長蛇の列やガソリン不足の原因だとしている。
監視団体RACによると、無鉛ガソリンの1リットル当たりの価格は24日以降、1ペニー(約1.5円)値上がりした。一部の小売業者は需要が急増する中、販売価格を大きく引き上げているという。
こうした状況で、医療や福祉の関係者、刑務所職員の組合などから、ガソリンの優先購入を認めるよう求める声が出ている。
介護関連の組織は、介護スタッフが給油に並び、介護利用者を待たせていると現状を説明。公務員などの労組ユニゾンは、人々の生活に不可欠な仕事をしている労働者専用のガソリンスタンドを指定するよう、政府に求めた。
ロンドン北部の救急車運転手はBBCに、給油のためにガソリンスタンドを何カ所か回らなくてはならなかったと話した。
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ビザ発行で労働者確保狙う
政府はまた、燃料などを車両で運搬するため必要なADR免許について、有効期間の延長を決めた。年内に失効するものは、更新講習や試験なしに2022年1月末まで有効にする。
野党・労働党は、ガソリン危機への政府の対応を「失敗を認めたもの」と批判。軍に協力を求めた措置は「ばんそうこう」でしかないとした。
政府はさらに、需要が大きい地域に供給を増やすため、石油各社が協力することを一時的に認めた。
また、燃料タンカーと食品トラックの外国人運転手5000人と、鶏肉加工作業員5500人には、クリスマスイヴまでの一時的な査証(ビザ)を発行する。
だが、スーパー「アイスランド」の経営責任者リチャード・ウォーカーさんは、ビザが発行されるのは10月中旬からだと、BBCの番組ニューズナイトで指摘。わずか数週間の仕事のために、ヨーロッパ本土のフルタイムの仕事を辞めてイギリスに来る人などいないと述べた。
運転手不足の背景
現在、重量貨物の運搬車の免許をもつ100万人近くに対し、運送業に戻るよう働きかけが行われている。新たに免許を取る約3000人には、短期集中型の訓練が用意される見通し。
運転手不足は、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)、新型コロナウイルスの流行、給料レベル、労働者の高齢化などが原因になっている。
ブレグジットの後、ヨーロッパ出身の多くの運転手がイギリスから出身国へと戻ったり、他国で働くことを選んだりした。国境での事務手続きが増え、収入にも影響が及んだためだった。
新型ウイルスのパンデミックも、多くの外国人運転手を帰国させ、重量物運搬車(HGV)免許の試験を大幅に滞らせることにつながり、状況を悪化させた。運転手不足はドイツやポーランドなど、欧州連合の他の国でも発生している。
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