── 三菱商事が取り組んでいるスマートシティ開発の中でも非常に注目度の高い、インドネシアでの事業について教えてください。
荒木 ジャカルタの都心部近郊で「BSD Cityプロジェクト」というスマートシティ開発に取り組んでいます。都市の規模は約6000ha、ちょうど山手線の内側ほどの広大なエリアの開発です。このうち100ha超は新しい街をつくる「グリーンフィールド」型の開発で、公共交通の利用を念頭に、商業施設や病院、学校、住宅といった都市機能を組み合わせたスマートシティ開発を進めています。そのほかのエリアでは、既存の市街地をスマート化する「ブラウンフィールド」型の開発から取り組んでおり、都市OS(都市にある膨大なデータを蓄積・分析し、自治体や企業などが連携するためのプラットフォーム)の整備、自動運転やMaaS(様々な交通機関をシームレスに統合したシステム)の推進など、多くの領域で実証実験から実装へと順次、移行していく段階にあります。
宮﨑 “Smart Digital City(スマート・デジタル・シティ)”をコンセプトに掲げるBSD Cityでは、今後も様々なスマートデジタルサービスの導入を進めていきます。そのための取り組みの一つとして、今春、三菱商事は位置情報ビッグデータを管理するunerry(ウネリー)社と資本業務提携契約を締結しました。人流や売り上げといった個々のデータを組み合わせれば、暮らす人の属性・嗜好性に合わせたきめ細かな情報発信が可能となり、より魅力的な都市づくりができると期待しています。今後も様々な企業と連携して最先端の技術を導入していくとともに、BSD Cityでのスマートシティモデルを、ベトナムなど他の国でも活用できればと考えています。
── スマートシティ開発を行う場として、東南アジアを選ばれた理由は何でしょうか。
曽我 東南アジアではいま、急速な都市化や経済発展に伴って、大気汚染や交通混雑、少子高齢化といった様々な社会課題が深刻化しています。交通インフラや生活インフラなどのインフラ整備とともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使したソリューションを導入したスマートシティ開発を進めることで、脱炭素をはじめとした地域の課題解決や、都市価値の向上に寄与できると考えています。また、東南アジアがいま抱えている課題は、かつての日本が直面した課題と重なるものも多く、我々が培ってきた知見を生かせるという利点もあります。
豊田 グリーンフィールドとブラウンフィールドの両方が併存していることも重要なポイントですよね。というのも、スマートシティ開発においては「場所・もの」と「情報」を高次元でスムーズに接続するためのプラットフォーム構築が重要ですが、いきなり都市全体でそれを始めるのは非現実的です。まずは1施設、1区画といった小さな範囲でグリーンフィールド上にシステムを構築し、それをブラウンで展開してみる。そこで得たことを生かしてまた新たなシステムをグリーンで試す。このように両者を行き来しながら、段階的に規模を拡大し複合的にしていくことが、都市を変えるというスマートシティ開発において非常に大切なプロセスだと思います。
──住む人の文化も習慣も日本と異なる海外での都市開発には難しさもあるのでは。
曽我 スマートシティ開発はあくまで街づくりであり、地域の方々と心を通じた信頼関係がなくては100年持続する街は作れません。その点、世界各地に拠点があり、ニーズも悩みどころも民族性も違う環境で我々の先輩や仲間が必死に様々な事業を展開してきたことは、三菱商事の強みだと思っています。特にインドネシアは駐在員数が多く、多様な事業を現地の企業とともに長年展開してきました。これまで三菱商事が積み上げてきたことを、このスマートシティ開発で大きく花開かせるべく尽力していきます。
次回は、三菱商事がいま進めているスマートシティ開発について語り合います(11月7日公開予定)
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