中国北部(長江以北)が集中暖房のシーズンに入る中、山東省煙台市の県級市・海陽市の海陽原子力発電所は11月9日、海陽市民20万人に向け、原子力を熱源とする暖房供給を開始した。同市は全国で初めて、市内全域で原子力発電による「カーボンゼロ」の暖房供給を行う県級市となった。
原子力暖房は原子炉から得られる蒸気を熱源とし、複数回の熱交換を経て、最終的に市の暖房供給パイプ網で各家庭に熱を届ける仕組み。
従来、中国北部の集中暖房システムは石炭を主燃料としており、深刻な大気汚染の原因となっていた。海陽原子力発電所1号機発電ユニットは、世界最大規模のクリーンな熱電併給装置として、石炭燃焼ボイラー12台分を代替する。
原子力を熱源とする暖房供給の導入により、暖房シーズンごとに900万キロワット時(kWh)の電力削減に加え、標準石炭使用量約10万トン、二酸化炭素18万トン、二酸化硫黄1,188トン、窒素酸化物1,123トンの排出削減が見込まれる。
同市の劉宏涛書記によると、海陽原子力発電所1、2号機が2019年に商業運転を開始後、暖房用の地域熱供給システムの導入に向けた研究や、専門家によるフィジビリティー調査を実施。それらを踏まえ、同年5月に市政府は山東核電と、原子力暖房プロジェクトの共同推進に関する契約を締結。同年11月には、プロジェクト第1期が正式に稼働開始し、7,757世帯を対象に暖房供給を実施した。3年間の実証を経て、今回、海陽市全域への原子力暖房供給が実現した。
山東省では、省経済の運営上重要な分野に関し、関連するプロジェクトを補助金などで支援する方針を発表している(2021年9月28日記事参照)。原子力暖房供給を含めた新エネルギーの発展も対象分野として取り上げている。海陽原子力発電所は将来的に2億平方メートルの面積をカバーできる広域の暖房供給能力の形成を目指しており、省政府の支援も追い風となるものとみられる。
(董玥涵)
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