ステイホームが常態化する中、家の中でも快適に過ごすための消費行動が「巣ごもり需要」だ。中心となるのはネット通販やフードデリバリーなどだが、コロナ禍が長引くにつれその内容にも変化が見られるという。今回は巣ごもり需要のさまざまな国内事例について、過去記事からピックアップしていく。
拡大と変化を続ける「巣ごもり需要」とは
巣ごもり需要とは、在宅時間が増える中「家の中で快適に過ごす」ことを重視した消費行動をいう。2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルスの影響で、多くの人が外出を控えるようになり、結果として巣ごもり需要はかつてない規模で拡大した。
巣ごもり需要の中心となっているのは、ネット通販やフードデリバリー、ネットゲームなどのインターネット関連事業だ。コロナ禍で世界経済が停滞する中、これらの商品やサービスを扱う企業は大きく業績を伸ばしている。
もっとも巣ごもり需要そのものも時間とともに変化している。最初は単に「家まで届けてもらう」ことがメインだったサービスも、次第に「健康志向」や「高級化」といった付加価値に重きが置かれるようになってきた。
この記事では国内の巣ごもり需要をテーマに、さまざまな事例を紹介していく。
コロナで売れる空気清浄機、推しきれぬメーカー
巣ごもり需要で大きく売り上げを伸ばしているのが「空気清浄機」だ。その背景には「コロナの家庭内感染を防ぎたい」という切実なニーズがある。
しかし専門家によると家庭内感染を防ぐ上で最も効果があるのは窓開け換気で、「空気清浄機は換気の補助設備」だという。メーカーとしても「新型コロナウイルスの不活性化」などの効果には言及しづらいといい、ジレンマとなっている。
最高益の任天堂が挑む、スイッチ「限界」超え
任天堂のゲーム機「スイッチ」も好調だ。2021年3月期には、1年前から37%増となる2883万台を売り上げた。追い風となったのは、コロナ禍で社会現象となった「あつまれ どうぶつの森」ブームだ。
ガンプラ輝かせる老舗の塗装ペン 開発10年、巣ごもり需要で火
巣ごもり需要で火が付いた意外な商品が「塗装用のペン」だ。ステイホームが続く中、家の中でできる趣味としてプラモデル作りに取り組む人が増えたためだという。
特にガンダムのプラモデル「ガンプラ」愛好家をターゲットにした塗装ペンの新商品は、ライバル商品の倍の価格にもかからわらず「初回の生産ロットで出荷した数万本が1週間もたたないうちに完売」するほどの人気ぶりだ。
動画映えで家飲み需要に火を付けたアサヒ「生ジョッキ缶」
ステイホームで缶ビールの売り上げが伸びている。その中でも特に話題を集めたのが、「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」だ。
通常の缶とは違って缶の上面がすべて外れ「こんもりと白い泡が広い飲み口を覆う」新商品は、SNS上でも「もこもこの泡が出てアトラクションみたいで楽しかった」「クリーミーな泡が出てお店で飲む生ビールのようだった」などの好意的な口コミとともに拡散されているという。
ホンダの小型耕運機が独走 20年越しの販路開拓が結実
巣ごもり需要にともなう家庭菜園ブームで、ホンダの小型耕運機の売り上げが前年より15%も拡大しているという。
実はホンダの耕運機は、四輪事業より歴史が古い。しかもクボタやヤンマーといったライバルがプロ向けの製品に特化する中、家庭菜園など「アマチュア・ホビー向けの入門機」に力を入れてきた。しかも農機具の専門店ではなく、ホームセンターで購入相談からアフターサービスまで提供している。そうした特徴が、巣ごもり需要にぴったりはまった形だ。
「やらない理由」に商機あり。使いやすいミシンが大ヒット
家庭用の小型ミシンも、同様に人気を集めている。アックスヤマザキが2020年3月に発売した「子育てにちょうどいいミシン」は、1年間で5万台を売り上げる大ヒット商品となった。
同製品の特徴は、「めんどくさい」「出し入れが大変」「難しい」というミシンの三重苦を解決していることだ。書棚に収まるほどコンパクトでインテリアにもなじみ、初心者にも簡単に実践できる「レシピ」動画をスマホで見ることもできるという。
ヒット商品「売れているときにやめる」 格安靴・ヒラキの伊原会長
コロナ禍の巣ごもり需要で多くのヒット商品が誕生する中、コロナ後を強く意識している企業も少なくない。格安靴で人気を集めているヒラキの伊原会長も「我々のやってきたことがコロナ禍でたまたま顧客ニーズと合致しただけのこと」と語る一方で「この先どうなるかも正直分からんのですよ」と冷静だ。
流行が巡り巡るアパレル業界では、ヒット商品であっても「売れているときにやめる」ことが重要だと語る伊原会長。「アフターコロナがどうなるのか、正直まったく読めない」中、顧客のニーズに寄り添い続けて、長く愛される企業であることを目指している。
最後に
コロナ禍で人々の生活様式が一変し、いわゆる「巣ごもり需要」が伸び続けている。当初はネットショッピングやフードデリバリーが中心だったが、現在のニーズは実に多様だ。もちろんこの先、新型コロナや巣ごもり需要がどのように変化していくかは分からない。各企業の創意工夫だけでなく、今後発生するかもしれない新たなニーズについても引き続き注意深く観察していきたい。
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