ウクライナに軍事侵攻したロシアに国際社会が経済制裁を強化する中、ロシアからのエネルギー資源の供給が滞るリスクが世界で高まっている。日本も原油や液化天然ガス(LNG)、石炭をロシアから輸入しているが、ロシア産の入手が困難になった場合の代替調達は容易ではないとの指摘もあり、エネルギーの安定確保へ手腕が試される。
日本のLNG調達は買い手が毎年、一定量を長期的に引き取る「長期契約」が多い。資源エネルギー庁幹部は8日の参院経済産業委員会で「現時点で直ちにロシアからのLNG輸入が途絶することは考えていないが、事態は刻々と変化しており、不測の事態に備えて官民連携して万全の対策を取る必要がある」とした。
東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERA(ジェラ)は令和2年度の輸入量のうち、LNGの1割未満と石炭の1割強をロシアから調達。東京ガスも、LNGの輸入量の約12%がロシアからだ。両社ともロシア産のLNGは、極東サハリンの資源開発事業「サハリン2」からの調達が中心という。
当座の対応策としては、「スポット取引」と呼ばれる随時契約の市場からの代替調達や、企業間でのLNGの融通がある。エネルギー各社とも時間をかけて調達先の多様化を進めてきたが、ある大手企業の幹部は「ロシアからのLNG調達がなくなった場合、別で代替できるかといえば、簡単ではない」と指摘する。
一方、ロシア産原油をめぐっては、米国のブリンケン国務長官が輸入禁止措置を欧州の同盟国と検討していると表明。日本も、萩生田光一経済産業相が8日の記者会見で「先進7カ国(G7)とも歩調を合わせて適切に対応していきたい」と述べた。
ただ、ロイター通信によると、石油輸出国機構(OPEC)のバルキンド事務局長は7日、米テキサス州で開かれたイベントで「世界には(ロシアの原油などの輸出に相当する)日量700万バレルに取って代われる能力はない」と指摘しており、日本は慎重に対応を判断するとみられる。
(森田晶宏)
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