シンガポール・エネルギー市場監督庁(EMA)は6月16日、国際エネルギー市場の混乱が継続していることを受け、2021年10月から導入した一連の電力確保の措置を2023年3月末まで延長すると発表した。また、同庁は2021年12月に発表した時限措置「暫定電力契約支援スキーム(TRECS)」も、2023年3月末まで延長する。TRECSは、電力価格の急騰に伴い長期での電力購入契約の更新や新規契約ができない工場など大口電力ユーザー向けに導入された、一時的に固定価格での電力購入を可能にする措置だ(注1)。
シンガポールの発電燃料の約95%はガスで、インドネシアから海底パイプラインで天然ガスを輸入しているほか、中東などから液化天然ガス(LNG)を輸入している。エネルギー・マーケット・カンパニー(EMC)が運営するシンガポール電力卸市場(SWEM)の卸売価格「統一シンガポール電力価格(USEP、注2)」は2021年10月以降、急騰している。高騰の背景には、世界的にガスの供給が不足する一方、需要が増加して国際ガス価格が上昇していることがある。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化は、ガス価格がさらに上昇する要因となっている。USEPは2021年1月には1メガワット時(MWh)当たり平均77.81シンガポール・ドル(約7,556円、Sドル、1Sドル=約97円)だったのが、2022年4月には同365.53Sドルと4倍以上に上昇した(添付資料図参照)。
こうした状況を受けて、EMAは2021年10月以降、(1)電力会社が発電燃料用に天然ガスが調達できない際にLNGの供給を受けられる備蓄施設「LNG予備施設(SLF)」を設置し、(2)SWEMでエネルギー不足が予想される場合に、EMAが発電会社にSLFからLNGの調達を指示できるようにしたほか、(3)EMAが発電会社に発電に必要な燃料の確保を指示できるようにしていた。
その後も、国際電力市場の混乱が継続しているのを受けて、EMAはこのほど、2021年10月に導入した(1)~(3)とTRECSについて2023年3月末までの延長を決めた。
USEPは2021年10月には一時、1MWh当たり平均491.24Sドルへと高騰したが、EMAは2021年10月以降の一連の措置により、2022年1~5月に平均で同350Sドルまで下落するのに貢献したとしている。同庁は今後の状況を注視した上で、必要であれば新たな措置を導入する方針を示した。
(注1)TRECSの詳細は、EMAのホームページを参照。
(注2)統一シンガポール電力価格(USEP)は、EMCが運営する電力卸市場(SWEM)で需要と供給に応じて30分ごとに設定されている価格。最新の価格はEMCのウェブサイトを参照。
(本田智津絵)
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