昨年から顕在化した薬不足問題。背景にあったのは独特な業界構造、そして薬価改定に苦しむメーカーの窮状だった。
ジェネリック薬への置き換えによる医療費適正効果は、年間約2兆円になる(写真:IYO/ PIXTA)
「いつもの薬がないって、どういうことなの?」
都内に住む50代男性は昨年末、持病の薬をもらいに薬局を尋ねたところ、入荷がないと告げられた。薬は、数年前に安価なジェネリック(後発)品に切り替えていた。幸い、代替として違うメーカーの後発品を処方され、事なきを得た。だが、冒頭のように薬剤師を問いつめたという。
不正から始まった「薬不足」
「薬がないのは、薬局のせいではない。それを患者に理解してもらうため、無駄な労力と時間を割かなければならなくなった」
そう嘆くのは、都心で調剤薬局を営む男性だ。この1年あまり、薬局へ出勤すると、薬の卸会社から入荷遅延品目を知らせるFAXが毎日のように届く。入荷できない薬は他メーカーで代替するが、患者への説明に労力を奪われている状態だ。
そんな時、「日医工」という会社名を挙げると、患者の納得が早くなったという。富山県に本社を置く後発品大手だが、2020年に本来の手順として認められていない不正な製造が発覚。主力の工場が行政処分となったことで、大きく報じられた。
日医工は現在、一部商品の生産・販売を続けている。ただ、主力工場からの出荷再開に時間を要し、売り上げが減少したことで資金繰りに行き詰まり、2022年5月には私的整理である事業再生ADRを申請。銀行との交渉は現在も続いていて、再建の行き先はいまだ不透明だ。
国内の後発品全体の数量のうち、1割強を生産していた日医工。一部とはいえ、出荷停止の影響は小さくない。同社から他社への切り替え需要が急増したが、対応しきれず販売先を絞る(出荷調整)メーカーが続出した。
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