九州管内で電力の安定供給に懸念が生じている。12~13日にかけて想定以上の気温上昇で電力需要が増加し、九州電力送配電(福岡市)は他電力から1年8カ月ぶりに電力の融通を受けた。九電は12日、テロ対策用施設の完成が期限に間に合わず、安定供給に寄与していた玄海原発4号機(佐賀県玄海町)の運転を停止。政府は、原発の新増設を含めた検討を進める方針で、電力が逼迫(ひっぱく)する現状を踏まえた政策が求められる。
九電によると、他電力から電力融通を受けるのは昨年1月以来。12~13日は管内の最高気温が予測を上回り、供給予備率が最低限必要な3%を下回る見通しとなった。12日は午後4時半~同8時まで関西電力送配電などから最大70万キロワットを、13日は午後4時半~同7時まで、中部電力パワーグリッドや四国電力送配電などから最大40万キロワットの供給を受けた。
今夏、九電管内の電力需給は綱渡りが続いていた。気温は平年を上回り、九電は、定期検査中だった玄海原発4号機の運転再開を7月に前倒したほか、石炭火力発電所の休止予定を撤回して供給力確保に努めた。加えて、管内の他の事業者から供給力を追加公募し、節電の協力を得てしのいだのが現状で、九電幹部は「人の命に関わる停電はなんとしてでも避ける努力をしているが、このままの状態が続けばいつかは停電が起きるかもしれない」と危機感を強めていた。
厳しい状況が続く中、12日には玄海原発4号機が運転を停止し、定期検査に入った。設置が義務付けられているテロ対策施設の完成が13日の設置期限までに間に合わなかったためだ。施設が完成する予定の来年2月まで運転停止を余儀なくされ、今冬の電力供給に活用できないのは打撃となる。
「政治判断」は
岸田文雄首相は7月、今冬の電力需給逼迫対策として、最大9基の原発稼働の方針を示した。いずれも原子力規制委員会の新規制基準に合格し、再稼働済みの原発だが、テロ対策施設の完成が前提となる原発が含まれる。電力関係者の間では、岸田首相の「政治判断」で原発稼働の前倒しなどが行われるかが注目されており、ある大手電力幹部は「原発が稼働すれば、自社の火力発電用のLNG(液化天然ガス)を他の電力会社にまわせる。テロ対策施設の設置期限の前後で安全上のリスクが大きく変わるわけではなく、再稼働で供給力は好転する」と指摘する。
そのLNGをめぐっては、日本はウクライナ侵攻を続けるロシアから一定程度輸入しており、ロシアが同国極東の天然ガス開発事業「サハリン2」の事実上の接収を示唆したことを踏まえると、途絶に向けた備えが欠かせない。欧州では脱炭素を進めてきたドイツが石炭火力発電所の再開に踏み切るなど、各国でエネルギー政策の転換が進んでいる。
日本の原子力活用の議論は長く停滞していたが、岸田首相は8月24日、次世代原発の開発・建設を検討するよう指示した。深刻な電力不足に対応するため、日本も政策の見直しに後れを取っている場合ではない。 (一居真由子)
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