英国の与党・保守党は9月5日、ボリス・ジョンソン首相の後継となる新党首に、エリザベス・トラス外務・英連邦・開発相を選出した。トラス氏は6日にエリザベス女王の任命を受け、首相に就任する。
7月中旬に始まった保守党の党首選で、トラス氏とリシ・スーナック前財務相の2人が党所属下院議員の投票を経て決選投票に残った(2022年7月21日記事参照)。8月から行われた党員約17万人による決選投票は2日に締め切られ、トラス氏が8万1,326票を獲得し、6万399票のスーナック氏を破った。
トラス氏は勝利後の演説で減税や経済成長に向けた計画を発表し、光熱費上昇やエネルギー供給の問題を含めた危機に対応するとした。また、2024年に予定される次回の総選挙で保守党に大きな勝利をもたらすと述べた。
同氏は経済政策として、大企業向け法人税の増税や国民保険料の引き上げを撤回する意向を示してきた。また「テレグラフ」紙への寄稿(9月3日付)で、党首に選出され首相に就任した場合、1週目に光熱費上昇への対応やエネルギー供給に関する計画を発表し、9月中に経済対策パッケージを発表するとした。このほか、規制撤廃などを通じて経済成長を促し、財政の健全化を図るという。
一方で、保守党の一体性を不安視する声もある。同党所属の下院議員ジョンソン首相がジェレミー・ハント氏を大差で下した前回(2019年)の党首選とは異なり、今回は接戦となり、得票数も党員数の半数に届かなかった。調査会社ユーガブが9月5日に行った調査では、回答した保守党支持者の約4割がトラス氏の選出を喜ばしい(pleased)と回答した一方、約3割が残念(disappointed)とした。プリティ・パテル内相はトラス氏の勝利後にジョンソン首相宛てに書簡を送り辞任を表明した。こうした状況もあり、敗れたスーナック氏のほか、ジョンソン首相、テレーザ・メイ元首相、デービッド・キャメロン元首相も保守党全体でトラス氏を支援することを呼び掛けている。
産業界は5日、トラス新首相が誕生することを歓迎するとともに、現在のエネルギー価格高騰などへの対応を求める声明を相次いで発表した。自動車製造販売者協会(SMMT)は、価格高騰への対応に加えて、ビジネスに係るコスト削減をトラス新首相は優先事項とすべきと指摘。製造業の業界団体メイクUKはエネルギー、原材料の価格高騰、労働者不足への対応が必要とした。再エネ関連の業界団体リニューアブルUKは、再エネ関連プロジェクトの展開加速を求めた。
(山田恭之)
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