半導体業界でも共同物流の機運が高まってきた。レスターホールディングス(HD)は共同物流を通じて輸送コストを圧縮し、半導体商社などの収益改善を後押しすることを視野に入れる。従来、半導体は輸送頻度が低いことなどから共同物流に対する要望は少なく、進んでこなかった。一方で経済安全保障上、半導体の重要性が高まる中、安定供給のために業界全体での取り組みが必要になってきており、共同物流が現実味を帯びてきた。(阿部未沙子)
3月に日本半導体商社協会(DAFS)と佐川急便が実施したシンポジウム。半導体商社など関係者が出席し、業界内の物流における課題があらためて認識された。英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは、「もう少し(物流を)効率化していく必要がある」と対応を促した。
共同物流に対する商社の受け止めはさまざまだ。「物流から経営を支えたい」と話すのは、レスターホールディングス(HD)の飛崎卓也物流企画室長。共同物流を行うことで物流コストを圧縮し、「半導体・電子部品商社の利益率を改善できれば」(飛崎室長)との思いがある。
半導体に限ると、例えばラピダス(東京都千代田区)設立といった製造に注目が集まるが「物流は注目されにくい。より速く共同物流を進めないと手遅れになるのではないか」(同)と懸念する。まずは他社と協力して先行事例を示し、理解を得たい考えだ。
産業機器向けの半導体などを扱う商社の物流担当者は、共同物流に賛成する。「商品に貼るラベルや容器、パレットの共通化ができれば、非常にメリットを感じる」(担当者)との見解を示す。
新型コロナウイルスの感染拡大前と現在を比べると物流コストは上昇しており、「(物流コストは)大きなコストのうちの一つ」(同)との認識だ。共同物流実現のために最も重要なのは、仕入れ先である半導体メーカーの存在。しかし「メーカーに(共同物流の重要性が)どこまで響いているのか現状では疑問に感じた」(同)という。
ただ、共同物流に慎重な見方もある。工場自動化(FA)機器の関連部品を扱う商社は、共同物流に対し「サプライチェーン(供給網)全体の最適化という面では理解できる」(同社)とした上で「自社で構築した物流網自体が、顧客にとって付加価値になる」(同)と指摘する。
さらに事業継続計画(BCP)の観点から保管場所を分散することを重視する顧客には、共同で保管するデメリットもありそうだ。
物流をめぐってはドライバー不足や残業上限規制に伴う「2024年問題」が課題だ。国も対応を急いでおり、打開策の一つが共同物流。個別に輸送していた貨物を共同で輸送するほか、保管や荷役なども効率化する。
小売りや化学業界などが先行しており、輸送効率や積載率の向上、運搬のための車両台数が絞られることで二酸化炭素(CO2)の排出量削減も期待できる。
輸送頻度の観点から半導体業界では共同物流のニーズがそれほど高くなかったものの、2024年問題は懸念材料だ。共同物流を行うためには商社のみならず、仕入先や納入先との連携が必要だが「積極的に音頭をとる商社はいないのではないか」との声も聞こえる。物流業界での人手不足が予想される中、業界一体での対応が急がれる。
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