経済産業省は使用済みのネオジム磁石から重レアアース(希土類)を高効率に分離・精製する技術開発を支援する。電気自動車(EV)市場の拡大で磁石の需給が逼迫(ひっぱく)する見通しだが、原材料である重希土類の生産が中国など海外に偏る。国内で廃磁石からコスト競争力のある重希土類を安定確保できる環境を整備し、磁石の供給途絶リスクを減らすとともに資源自律経済の実現につなげる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を介し、民間事業者や大学などに開発を委託する。事業期間は2027年度までの5年間。
使用済み磁石や磁石の生産過程で発生する規格外品、端材からジスプロシウムやテルビウムといった重希土類を分離・精製する技術の高度化を目指す。有機溶媒を使用し抽出する従来法と比べ工程を簡素化するなどし、処理能力の向上や専用装置の設置面積を削減。再生重希土類の生産性やコスト競争力を高めたい考え。
ネオジム磁石はEVや風力発電機、ドローンなどに搭載するモーター部材として、今後大幅な需要増が見込まれており、経産省によると世界需要は30年に20年比2倍以上に急拡大する見通し。
ただ、モーターの部材として欠かせないネオジム磁石の世界シェアは中国企業が大半を占めており、ドイツが1%、日本は15%程度にとどまる。磁石に欠かせない重希土類も中国への依存度が高い。
廃磁石に含まれる重希土類の再利用は工程が複雑で現状はコスト面に課題があり進んでいない。国内メーカーが自社の生産過程で生じた磁石の規格外品や端材を再利用する場合は、中国やベトナムなど海外工場へ輸出し、現地で分離・精製したものを輸入して使用している。
経産省は将来、磁石の需給が逼迫するリスクを見通し、希土類の使用量を減らした磁石開発などを支援してきた。今回はコスト面でリサイクルに課題のある重希土類の分離・精製技術の高度化に焦点を当て、実用化を後押しする。
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