エネルギー関連の法改正をまとめた「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が成立した。温暖化ガスの排出削減と電力の安定供給の両立に向けて、再生可能エネルギーの最大限の拡大や原子力発電の有効活用を明確にしたのは妥当な方策だ。
2011年に起きた東京電力福島第1原発の事故の後、抑制的だった原発政策を転換する。安全・安心を最優先したうえで、国や電力会社は停止中の原発の運転再開へ真摯に取り組んでほしい。
岸田政権が2月に閣議決定した「GX基本方針」の法的な枠組みとして、電気事業法や原子炉等規制法、原子力基本法など5本の関連法の改正をひとつに束ねた。
最大の変更点は原発の運転延長だ。福島の事故後、政府は「原則40年、最長60年」と運転期間を定めた。その枠組みは維持しつつ、経済産業相の判断で安全審査や裁判所の命令による停止期間を除外し、60年超の運転を認める。
原発を活用した安定供給や脱炭素実現は「国の責務」とした。加えて原発に対する国民からの信頼回復もまた政府の責任だ。延長期間の算定に向けた透明性あるルール作りはもちろん、使用済み核燃料の最終処分や福島第1原発の廃炉など、国が前面に立つべき課題の着実な進展が不可欠である。
電力会社にも不退転の決意を求めたい。東電のテロ対策の不備は発覚から2年以上たつのに改善が不十分なままだ。日本原子力発電は書類の記載ミスが続発し、このままなら再稼働に向けた審査の打ち切りもあり得る状況である。原発を運転する組織的な能力の欠如を疑われても仕方があるまい。
燃料価格の上昇を反映させるとして電力7社は1日から家庭向け電気料金を引き上げた。電力不足の恐れがあるため、経産省は今夏も東電管内に節電を要請する。
低廉かつ潤沢な電力という安定供給の根本が揺らげば、国民生活や企業の国際競争力への影響は甚大だ。国と電力会社は使命感を持って状況改善に努めるべきだ。
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