北海道でタクシードライバーが不足している。新型コロナウイルスの感染症法上の取り扱いが5類に引き下げされ、市民生活も回復し観光客も戻るなど需要は高まる一方だが、肝心のドライバーが足りず十分に供給できていない。タクシー業界からは「しばらくは運転手不足の状態が続きそうだ」との声が上がる。
夜は低稼働率
観光客が戻ってきた北海道最大の歓楽街すすきの。酔客や観光客らで深夜までにぎわうが、帰宅時に手を挙げてタクシーに乗車しようとしても、乗れることはめったにない。深夜にはタクシー乗り場前に長い行列もできている。50代のベテランドライバーは「流しの営業車を捕まえるほうが難しい。時間がかかってもタクシー乗り場で待つ方が無難だ」と話す。
札幌市厚別区の法人タクシー大手の札幌交通は市内全体で約600台の営業車を登録しているが、その稼働率は日勤帯で7~8割、夜勤帯は5~6割まで落ち込む。
営業幹部は「この3年間は夜間の売り上げが激減し、多くのドライバーが日中勤務に変わった。需要は戻ってきているが、夜勤帯の勤務者が少なく稼働できない」と説明する。コロナ禍からの回復以降、人材確保策は強化しているが、入社よりも退職者のほうが多いため、数台は稼働できない状態。「稼げるときに営業車を出せないのは本当につらい」と厳しい表情を見せた。
年5~9%減
北海道ハイヤー協会によると、札幌市とその周辺3市区域のドライバー数は平成31年3月時点で約9千人(法人のみ。個人タクシーなど除く)。ここ数年は年間5~9%のペースで減少しており、直近の令和5年6月時点では6647人で、わずか5年で約2500人が業界から離れた格好だ。
年代別では全体の9割が50代以上。30代から60代は減少傾向だったが、70代はほぼ横ばいで、80代は微増となっており、この5年で高齢化に拍車がかかっているという。今年3月には人材不足や高齢化などを理由に、市内の「札幌団地タクシー」が廃業に追い込まれる事態にもなった。
あらゆる業種で若手人材の獲得合戦が激化する中、タクシー業界も多様化する働き方への対応を模索している。
札幌交通の担当者は「若い世代は収入より休日や自分の時間を重視する。休みの多い働き方を提案しているが、昔の業界イメージが払拭しきれず親の反対で入社をあきらめる若い人もいる」と語る。
一方、ドライバーの収入は上向きだ。一般的なタクシードライバーは基本給プラス売り上げの歩合が手取りになる。最近ではスマートフォンの配車アプリなどIT化の進展で流し営業で客を探す機会はそれほど多くないという。現役のタクシードライバーは「お客さんを乗せている途中に配車アプリの紹介が次々と入ったり、会社から無線で予約対応の連絡があったりする。コロナの流行期と比べると本当にありがたいけれど、対応しきれない日もある」と現状を説明する。
道内の地方都市も状況は同じだ。道南のタクシー会社は高齢者の通院や買い物利用などで稼働率は高いが、ドライバー不足で数台は営業所内に残った状態という。同社幹部は「手を挙げればいつでもタクシーに乗れる時代ではなくなった。業者のドライバー確保は急務だが、利用する側も早めの予約など工夫が必要」と話している。
札幌の法人タクシー事情 札幌ハイヤー協会によると49会員事業者の1日1台あたり平均売上額は約3万9000円。新型コロナウイルス禍前の令和元年と比べると約7000円増。需要回復と運賃引き上げによるもので「最近は月収で40万~50万円を稼ぐ人もいる。高齢でも仕事の内容次第で高収入が期待できる」とアピールするなど若手人材の獲得に躍起だ。
記者の独り言 多くのタクシードライバーから「ひと息つく間もない」と聞く。コロナ禍を思えば現在の多忙ぶりは喜ばしいが、利用者目線では少し不便。別料金で優先予約配車をする会社もあるが、相次ぐ値上げの中にあっては気後れしがちだ。半年先の積雪期には需要がさらに増えるが、悪路の影響で予約は一層取りにくくなるだろう。業界の努力だけではもはや対応しきれなくなっている。(坂本隆浩)
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