医療現場の薬不足が深刻化している。国民の命や健康に関わる必需品だ。長期にわたる供給不足は異常事態であり、解消を急がなければならない。
院内処方している医療機関の9割が「入手困難な医薬品がある」と日本医師会の調査に回答した。発注しても納品されないケースも多いという。せき止めや糖尿病薬、抗うつ薬など多岐にわたる。
同じ成分の別の薬に変更したり、後発薬が調達できない場合は、先発薬に切り替えたりするなどしてしのいでいるのが実態だ。
インフルエンザ流行などの影響がある。厚生労働省は増産に協力する企業への支援を経済対策に盛り込んだ。今冬の流行拡大に備え、万全を期す必要がある。
2020年末から続く後発薬メーカーの不祥事も供給不足に拍車をかけている。
別の薬の成分混入や試験データの改ざんなど不正が相次いで発覚した。今年9月末時点で3割強の後発薬が限定出荷や供給停止となっている。10月には最大手の沢井製薬で不正が見つかり、品不足の長期化が懸念される。
後発薬は先発薬より薬価が低い。医療費抑制のため国が使用を後押ししてきたことから、多くの企業が参入し、処方薬の約8割を占めるようになった。
だが、市場の急拡大や価格競争によるひずみが表れている。
利益を得ようと新たな薬の製造を次々と手がけてきた結果、多品種少量生産となっている。薄利でも製造を打ち切りにくく、需要の変化に柔軟に対応するのが難しい。原材料価格の高騰も経営を圧迫している。
薬価が毎年のように引き下げられる中、人材の育成や品質管理に手が回らなくなっていたとの指摘もある。メーカーが薬の品質管理を徹底するのは当然だが、国も安全に目配りしなければならない。
薬の供給不足を起こさないためには、臨機応変に増産が可能となる仕組みの構築が欠かせない。現行の薬価基準が適切なのか、企業の製造を後押しする観点からも見直しが求められる。
供給の偏りや在庫の目詰まりをなくすには流通実態の透明化も必要となる。国は安定供給の実現に向けた環境作りを主導すべきだ。
からの記事と詳細 ( 社説:深刻化する薬不足 国は安定供給の処方箋を - 毎日新聞 )
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