サントリーホールディングス(HD)傘下で酒類事業を営むサントリーの鳥井信宏社長は、国内外で人気が高まり品薄傾向にある同社の高価格帯(プレミアム)のウイスキーについて、供給量が増えるのは2027年頃になる可能性があるとの見通しを示した。
鳥井氏は10月の都内でのインタビューで、10年代半ばからウイスキーの増産に取り組み「アクセルは踏み続けている」ものの、製品の熟成には時間がかかることから「27年くらいにもう少し量が出るかもしれない」と予想した。同氏によるとサントリーでは過去10年間あまりで約600億-700億円をウイスキーの貯蔵庫などに投資してきたという。
今年同社はウイスキー作りの100周年を迎え、2年かけて100億円を投じて国内のモルトウイスキーの2大生産拠点である山崎蒸溜所(大阪府島本町)と白州蒸溜所(山梨県北杜市)の改修に 着手した。従来のじか火加熱に加えて電気式加熱が可能な蒸留釜も試験的に導入。さらに、機械化が進む業界の流れに反し、古くから使われていた水に漬けた大麦を床一面に敷いて発芽させる「フロアモルティング」手法を取り入れる。
鳥井氏は「最終的にお客様は味で判断する」ため、「値段に合ったものを提供するのがわれわれの使命」だと述べ、品薄が続く中でも品質で妥協しない姿勢を貫く姿勢を貫く。
00年代以降にサントリーの製品が国際的な賞を連続で受賞したことなどをきっかけに、世界で日本のウイスキーの知名度は一気に高まった。需要の急増に伴って「 山崎」や「 響」などに代表される同社の製品が品薄状態となって高額で転売される事態も起きている。
米競売大手 サザビーズによると、サントリーで最も熟成年数が長い「山崎55年」が78万ドル(約1億1669万円)と発売時の価格(330万円)の数十倍の値段が付いた。特に海外市場で同社製品への人気が加熱しており、供給力の増強が課題となっている。
相乗効果
観光・ホスピタリティが専門で、ウイスキー専門のバーも創設しているサウスフロリダ大学のアダム・ カーマー助教授は、100年前の日本のウイスキー作りはただスコットランドをまねるだけだったが、現在は成熟し、独自の地位を獲得したと指摘する。同氏によるとその中でリードしているのがサントリーで、今後は14年に買収した米ビームとの相乗効果も期待できるという。
近年国内ではブームに乗り、クラフトウイスキーメーカーが多数現れたほか、泡盛や日本酒のメーカーもウイスキー作りに乗り出している。国税庁によると21年までに10年前と比べ製造免許場は5倍以上となり、足元では品質の担保が課題になっている。
ブランドを守るべく業界団体の日本洋酒酒造組合が策定した自主基準が来年4月から完全適用となるが、鳥井氏はそれだけでは不十分だとみる。業界として「もう一段上に行くような努力をしなくてはいけない」と述べ、ジャパニーズウイスキーの定義を法律で明示することも必要との考えを示した。
鳥井氏は、ビーム社 買収後に米国でのウイスキー作りで熟成期間を見直すなど、海外拠点での品質も改善しているとした上で、10年後には同社が米国で作るウイスキーが国際的な評価を受ける可能性も十分あり得ると自信を見せた。
鳥井氏は慶応義塾大経済学部卒業後、1991年に日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入社、その6年後に家業のサントリーに加わった。
ビール事業のプレミアム化を手掛けたほか上場子会社の サントリー食品インターナショナル社長などを歴任し、2022年からサントリー社長を務める。創業者である鳥井信治郎のひ孫にあたり、サントリーホールディングスの次期トップの有力候補とも目されている。
からの記事と詳細 ( 品薄のプレミアムウイスキー、供給増は27年頃に-サントリー鳥井社長 - ブルームバーグ )
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