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Tuesday, December 26, 2023

【コラム】壊れた供給網、今こそスクラップ&ビルドの好機-クルパン - ブルームバーグ

数々のショックの一つを取り上げただけで、グローバル・サプライチェーンがいかに脆弱(ぜいじゃく)か分かるだろう。だが、気候変動や「中国からのデカップリング(切り離し)」、未曽有の技術開発、戦争、コスト上昇、労働力不足が重なり、逆に国際貿易を良い方向に変えるきっかけになる条件の組み合わせが今や整った。

  新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が、過去4年の多くの混乱を引き起こした主因と考えられている。航空便運航や中国での工場操業の停止、特定製品の需要急増がサプライチェーンの途絶を招いた。脆弱性は既にそこに存在していたが、メーカーや運送委託者、物流業者、小売業者間のしばしば即応的な相互作用で覆い隠されていた。

  しかし、新型コロナが私たちに教えてくれたのは、すぐに必要なモノだけ残し在庫を効率化する ジャストインタイム在庫戦略が、標準からの逸脱に対応できるほど頑強でないということだ。

  トヨタ自動車は在庫を減らし効率化を推進したパイオニアだったが、この無駄を省くアプローチを皮肉にも10年ほど前に ひそかにやめた。その結果、日本の自動車メーカーは比較的無傷で半導体不足を乗り切った。その一方で、ライバルの米ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターは、部品不足に対応するため製品のマイナーチェンジや工場のライン停止を余儀なくされた。

  テック業界でも同様の見直しが行われた。先頭に立ったのは米アップルであり、台湾積体電路製造(TSMC)やフォックスコン・テクノロジー・グループは、必要になるかなり前に調整を進めたサプライチェーン・プロバイダーの代表例だ。スマートフォン「iPhone」の製造工程は、TSMCがまずチップを供給し、次にフォックスコンがデバイスを組み立て、アップルが物流と販売を手掛ける。サプライチェーンの上流と中流、下流部門がそれぞれ抱える在庫の割合は過去10年でほぼ倍増した。

Just In Case

Just in time is no longer the mantra as industries learn to prepare for disasters and disruptions

Source: Bloomberg

  自動車から携帯電話に至るまで、このような在庫拡充が、新型コロナ感染拡大に伴う操業停止や労働力不足、戦争といった一時的なショックの影響を緩和してきた。しかし 最近の出来事は、在庫だけでは危機を乗り切るために十分でないことを立証した。

  現代のグローバル経済は、各国が保護主義的障壁を設けたり、全てを現地生産しようとしたりするのでなく、自国が比較的得意とする分野に集中すべきだというアダム・スミス流の自由市場理論に依拠している。20世紀後半の貿易自由化は、多くの国に富をもたらし、何十億もの人々を貧困から救い出した。

  中国を中心拠点にグローバル生産を集約させるハブアンドスポーク構造が結果的に生まれた。ソ連が崩壊し、世界が比較的平和になった後このモデルは勢いを増したが、グローバル航空・海上輸送ネットワークの急拡大なしにそれはあり得なかった。大型航空機とさらに巨大な輸送船の存在は、末端市場近くで現地生産を試みるより全てを1カ所で製造し、全世界に輸送する方が迅速かつ安価であることを物語っている。アダム・スミスは正しかったようだ。

  それでも2020年のパンデミック発生直後から旅客便がほぼ全面的に運航停止となり、このモデルがあまりにもろいことを示す最初の兆候となった。21年のスエズ運河の通航遮断は、海上交通の一つの水路がいかに不安定かを思い起こさせた。

  主要消費国と少数の生産拠点を結ぶ わずか数本の供給ラインに依存する現状もスエズ運河の当時の状況は浮き彫りにした。地球の反対側では、気候変動が干ばつを引き起こし、アジアと米州東部を結ぶパナマ運河の交通を妨げている。

  米中間の疑心暗鬼の高まりが救いになるかもしれない。

    国際的バイヤーは長年にわたり「生産の卵」を一つのかごに入れるのは危険だと知っていた。テック冷戦を含む緊張の高まりに伴い、顧客とサプライヤーは中国から離れ、インドやベトナム、メキシコへのシフトを余儀なくされている。中国に取って代わることはなかろうが、今後数年は同国から供給される製品の割合が減少すると予想される。

  中国を抜き人口世界一になったとされるインドが、そのビジネスの一部を担うだろうが、中国の深圳市や鄭州市に見られるようなメガファクトリーの時代は終わった。

  物流業者も適応する必要があろう。上海のような港からロサンゼルスといった米国の目的地までの航路は、かつて海上輸送で最も忙しいルートだった。そのため、海運会社は1隻の船に2万個を超えるコンテナを積み込むことができ、かつてないスケールメリットをもたらした。だが中国はもはや安価な労働力の供給元ではなく、むしろ不足しがちであり、ここ数年で利点は薄れつつある。

  今やカンボジアやフィリピン、ベトナムを結ぶ アジア域内路線が最も混雑している。このような輸送の多くは、半完成品を製造チェーンの次の工場に移動させるだけであり、アジア諸国が今やグローバル生産の主要な消費国という認識も背景にある。

  アジア地域のより小さい港への輸送分散は、より軽量な貨物をより小型の船で運ぶことを迫るだろう。グローバル産業は、より多くのドックがより多くの工場を結び、それぞれがより少ない製品を加工するサプライチェーンに取り組まざるを得ない。

  サプライチェーンの限界を試す危機に直面したことで、変革の緊急性が浮き彫りになった。その結果、国際貿易と製造業の枠組みは、はるかに頑強でバランスの取れたものに生まれ変わるだろう。

(ティム・クルパン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題: Supply Chains Are Breaking. They’ll Rebuild Stronger: Tim Culpan(抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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