ウクライナ・キーウ近郊で11日未明、主要な発電所がロシア軍の攻撃により完全に破壊されたと、ウクライナのエネルギー企業セントレネルゴが発表した。
ロシア軍の攻撃を受けたのは、キーウの南50キロに位置するトリピッリャ火力発電所。キーウ州を含む3地域における最大の電力供給源だったと、関係者は語った。
「恐ろしい規模の破壊だ」と、セントレネルゴのアンドリイ・ホタ会長は述べた。
ロシアはこれまで長い間、ウクライナのエネルギー・システムを意図的かつ組織的に標的にしてきた。
ホタ氏は、11日朝の攻撃で「変圧器やタービン、発電機が破壊された。彼ら(ロシア)は(発電所を)100%破壊した」とBBCに語った。
この大規模な空爆の後、トリピッリャ火力発電所のタービン工場で火災が発生した。
ホタ氏によると、発電所は複数のミサイルの標的にされた。当時勤務中だったスタッフは最初のドローン(無人機)攻撃から間もなく避難したという。
地元住民は自宅の窓を閉め、あらゆる機器を充電し、水を買いだめするよう指示された。
80発以上のミサイルとドローンが、11日未明にウクライナ各地の標的を狙った。その多くはエネルギー・インフラを狙ったもので、攻撃の3分の1近くがウクライナの防空網を突破した。
その数時間後、セントレネルゴはトリピッリャ火力発電所が使用できなくなったと認めた。ウクライナ国内にある同社の発電能力はすべて破壊されたと、ホタ氏は述べた。
ウクライナ最大規模の電力供給源
トリピッリャ発電所はウクライナ最大規模の電力・熱供給源の一つだった。セントレネルゴが運営していたハルキウ州内の発電所は3月下旬に破壊され、ドネツク州内の発電所は2022年にロシア軍に占拠された。
ホタ氏によると、ハルキウ州の発電所とトリピッリャ火力発電所はかつて、ウクライナの電力需要の約8%をまかなっていた。
トリピッリャ火力発電所が破壊されたことで、夏場は致命的な問題は起きないだろうが、冬場には「非常に大きな問題」が生じると、ホタ氏は考えている。
また、欧州からスペア部品の支援を受けて発電所を再建することはできるが、同盟国がウクライナに強力な防空網を提供しなければ、攻撃に対してぜい弱であることに変わりはないとした。
「修復はできる。不可能を可能にすることはできる。だが、我々には保護が必要だ」
複数発電所が「甚大な被害」、電力供給がさらにひっ迫
ウクライナ西部では一夜にして少なくとも2つの火力発電所が「甚大な被害」を受け、全国の電力供給はますますひっ迫した。
3月中の度重なる攻撃により、電力会社DTEKの発電能力はすでに20%にまで低下していた。
DTEKはこれらの「完全に民間の発電所」に対するミサイル・ドローン攻撃によって、送電網に重要な電力を供給するという任務がより困難なものになるだろうと、BBCに述べた。
「攻撃を行う毎に、ロシアはウクライナのエネルギー・システムを窒息させ、我々が苦労して手に入れた自由を奪おうとしている」
北東部ハルキウ州は3月下旬に複数の発電所が大きな被害を受けた。そして今再び、ひどい打撃を受けている。
ハルキウ市のイホル・テレコフ市長は「非常に厳しい」状況だとし、各家庭や企業にさらなる計画停電を行うと発表した。
ハルキウの地下鉄は11日、節電のため一時運転が停止された。その後、運行が再開されたが、電力供給が不安定なため列車は断続的にしか動いていない。
プーチン氏、攻撃「せざるを得なかった」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、ウクライナ政府がロシア側の標的を攻撃したため、ウクライナのエネルギー施設への攻撃というかたちで「対応せざるを得なかった」と述べた。
2年前に理由もなく戦争を一方的に始めたのはプーチン氏だが、「残念なことに、我々は最近、(ロシアの)エネルギー拠点に対する一連の攻撃を観測しており、対応せざるを得なかった」とした。
「強調しておきたいのは、人道的理由も考慮に入れて、我々は冬場にはいかなる攻撃も行っていないということだ。つまり、病院などの社会施設を停電させたままにしたくなかったからだ。しかし、我々の電力施設に対する一連の攻撃を受け、対応せざるを得なかった」
「エネルギーに対する攻撃」は、ロシアが掲げる「ウクライナの非武装化」という目的の一部であり、2022年2月の侵攻開始時の目標の一つだったと、プーチン氏は付け加えた。
南部都市ミコライウでは11日、日中に連続攻撃があり、4人が死亡、複数人が負傷した。昼間に攻撃が行われるのは珍しい。
ウクライナ軍南部司令部は、「陰湿な」攻撃で民家や自動車、産業施設が被害を受けたと、メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。
からの記事と詳細 ( キーウ近郊の主要発電所、ロシアの攻撃で破壊される ウクライナ最大規模の電力供給源 - BBC.com )
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