総合電機各社の車載事業再編が新局面を迎えた。三菱電機とアイシンは電動車向け部品供給を強化するため、共同出資会社を立ち上げる。日立製作所は車部品を手がける日立Astemo(アステモ)への出資比率を引き下げてホンダと同等にし、パナソニックホールディングス(HD)は車部品子会社の米投資ファンドへの売却を決めた。世界で電気自動車(EV)シフトが進む中、各社は自前主義から脱却して生産性を高め、生き残りを図る。(特別取材班)
三菱電機とアイシンが立ち上げる共同出資会社は三菱電機が66%、アイシンが34%をそれぞれ出資する。三菱電機の自動車機器部門を分社化して4月に事業を始めた三菱電機モビリティ(東京都千代田区)から電動化事業に関連した事業を移管。アイシンからは開発人員の一部が出向する。詳細は今後詰めるが、1年以内の稼働を見込む。
三菱電機が強みを持つモーターや電力変換器などと、アイシンの持つ車両適合技術などを組み合わせ、市場競争力を強化する。三菱電機の加賀邦彦専務執行役(三菱電機モビリティ社長)は「我々の提供する電力変換機やモーターをシステムに最適化させるため、一緒にやらせていただきたい。(アイシンは)特に車両適合技術のトップだと考える」と同社への期待を語る。
三菱電機の自動車機器事業の2024年3月期の売上高は9441億円。電動車向けを強化すると同時に、カーナビゲーションシステムなど不採算事業からの撤退を決めている。また分社化で、外部の自動車関連メーカーとの連携強化を視野に入れていた。
一方、アイシンはOEM(完成車メーカー)のニーズが多様化する中、新会社で「技術のバリエーションを増やし、提供できる選択肢をさらに増やす」(同社)狙い。アイシンはEV向け駆動装置のイーアクスルで超小型モデルの投入を予定するなど、電動ユニットのラインアップを強化中だ。
ただ、イーアクスルは中国勢が存在感を強めており、コスト競争が激化しつつある。小型や高効率化だけでなく、長寿命や信頼性の向上で差別化が求められる。三菱電機とアイシンは互いの専門性を発揮し、電動化市場で存在感を高められるかが試される。
総合電機、車業界と緊密に
自動車業界ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の潮流でメーカーが巨額の開発費を必要とする中、中国勢の台頭で価格競争も激しくなっている。車載事業を抱える総合電機はこれに対応するためにも、自動車業界と関係を緊密化しようと手を打つ。
ナカニシ自動車産業リサーチ(東京都港区)の中西孝樹代表アナリストは「独立系の電機メーカーは自動車業界での立ち位置が難しい。OEMが垂直統合型で電動化への対応を進める中で、スケールの大きさが必要になった。今後、業界で合従連衡の動きは起きてくるだろう」と見通す。
東海東京インテリジェンス・ラボ(名古屋市東区)の杉浦誠司シニアアナリストは「モーターはアイシンも三菱電機も手がけているが、インバーターはアイシンはデンソーなどに比べて弱い。三菱電機の技術で補えるのでは」と指摘する。
新会社については「出資比率をみても三菱電機がトヨタ自動車に食い込みたいという意図が読み取れる」と述べた上で、「技術力があるのは認める。良いモノを高い値段で買ってもらうか、量産効果でコスト競争力を高めるかのどちらかだろう。新会社の努力次第では」と分析する。
一方、中西氏は「トヨタ向けだけでなく、マツダやSUBARU(スバル)、スズキなどトヨタの仲間もいる。電動化対応にはマーケットが必要。トヨタ陣営にマーケットが広がるだろう」と指摘する。
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