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Tuesday, March 24, 2020

ピンチをチャンスに、自動化ニーズが世界で急上昇中 新型コロナウイルス vs ロボット - ロボスタ

新型コロナウイルス「COVID-19」の世界的大流行が、2020年の世界に大きなインパクトを与えている。WHOによれば累計感染者数は3月24日時点で30万人を超えた。日々深刻化する状況が伝えられるイタリアやスペインなどヨーロッパ各国のほか、アメリカでも大変な状況だ。

公衆衛生のみならず経済面での影響については言うまでもない。多くの産業が危機に直面しており、ロボットをはじめとした技術系スタートアップも短期的・長期的影響を避けられないだろう。この点についてコーラルキャピタルのブログの記事「日本スタートアップ界のコロナウイルスとの戦い」がわかりやすい。

人-人の接触を避けるためのロボット

日本国内では反応が鈍いが、COVID-19との戦いはロボットコミュニティでも行われている。ロボットは輸送時における人と人との接触を最小限にでき、消毒を自動で行うことでウイルス増殖を抑えるツールとしても用いることができるからだ。

IEEE Spectrumは、IEEEフェローで外科手術ロボットの専門家である Guang-Zhong Yang氏に取材した、「Coronavirus Pandemic: A Call to Action for the Robotics Community」と題した記事を掲載した。Yang氏は上海の状況を紹介し、既存のロボット技術の活用だけでなく、感染症と戦うための新しいロボット技術を開発するべきであり、研究コミュニティはグローバルな視点をもって、もっと真剣に一丸となって体系立てた取り組みを行うべきだと提言している。詳細はIEEE Spectrumで読んでもらいたい。
Yang氏もインタビュー冒頭で述べているが、中国では今回の新型コロナウイルス蔓延に対して、まずは屋内外のデリバリーで、使えるロボットを使っているとのことだ。特に屋内での配膳やホテル内デリバリーではロボットが積極的に使われている。配膳ロボットを使えば、毎回いちいち防護服を着る必要もなく、患者に食料や物資を届けることもできる。またBaiduのロボットは病院に物資を届けるためにも使われているという。

地下鉄車内を過酸化水素蒸気で消毒「VHPロボット」

特に開発が進んでいるのが消毒用ロボットで、屋内用・屋外用共に開発が進められ、早速実装されている。香港の地下鉄では過酸化水素水を放出して鉄道車内を消毒するロボットが使われている。地下鉄を運行する香港鉄路(MTR)とAvalon Biomedical社が共同開発したロボットで、「Vapourised Hydrogen Peroxide Robot(VHPロボット)」と呼ばれている。過酸化水素蒸気(VHP)を普通の清掃では届かないようなスキマまで噴霧することで行き渡らせることができるという。
MTRのプレスリリースMetro Report Internatinalの記事によれば、8両編成の電車を自動モードで約4時間かけて消毒できるとのこと。車両だけではなくトイレ、食堂、乗客用リフトなどの殺菌にも使われたという。さらに20台のロボットを整備して鉄道網の消毒に役立てるとのことだ。

また、インドの技術コンサル会社で掃除ロボットなどを開発しているMilagrow Humantech社は屋内用、屋外用消毒ロボットの動画をそれぞれYoutubeで公開中だ。

同じようなコンセプトのロボットは、おそらくいま、世界中の移動ロボット会社で開発中と思われる。たとえば農業用の農薬噴霧ロボットや自律移動できる路上清掃ロボットを改造して屋外消毒に用いる試みなどが一部報じられ始めている。

屋内は紫外線で除染「UVDロボット」

サービスロボット企業のBlue Ocean Roboticsの子会社でデンマーク・オーデンセに拠点を置くUVD Robotsは、紫外線で屋内を殺菌する「UVDロボット」をSunay HealthcareSupplyを通じて中国に出荷したとリリースしている。10分程度で部屋のなかを殺菌でき、病院スタッフを感染の危険にさらすことなく、コロナウイルスの蔓延を効果的に制限することができるという。このロボットは2018年から40カ国以上ですでに使われていたもので、米国電気電子学会(IEEE)と国際ロボット連盟(IFR)によるIERA賞を受賞するなど、その実績が買われたようだ。

患者とのビデオ対話にもロボット

AFPの記事「新型コロナとの闘いに「忍者ロボット」参上、タイ病院で活躍」によれば、タイではバンコク市内・近郊の4つの病院内での患者とのビデオ通話にロボットが使われていると報じられている。チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)が開発していたもので、もともとは回復途上の脳卒中患者の観察のためのロボットだったものを転用したという。
また、UBTECHはパトロールロボットの「ATRIS」、屋内用自律移動ロボット「AIMBOT」、サービスロボット「Cruzr」などの各種ロボットを深セン第三人民病院にコロナウイルス対策として改造して投入。まとめた動画をYoutubeで公開している。

このほか、北京に拠点をおくCloudMindsはPepperに移動台車をつけて同社のクラウドを活用したロボット「Cloud Pepper」そのほかを武漢の病院に寄贈。活用されているとCNETは報じている。なお、CloudMindsはソフトバンクビジョンファンドが支援している企業だが、2020年初頭には手元資金が尽きて大幅リストラを行っていると報じられた。
なんにしても、ロボットには単にスタッフの負担を軽減するだけでなく、ソーシャルロボット的な、患者の孤独をケアする役割も求められているのだろう。

ピンチを技術革新のチャンスに転換できるか

このほか、検査や検体取り扱いの自動化や、医療従事者を助けるためのモバイルマニピュレータの開発も進められている。これまでは市場があまり見えていなかったロボットも、この機会に導入が一気に進む可能性がある。ただ、本当にパンデミックのさなかに置かれてしまった医療現場は大忙しで、新規の面倒な機械は導入したくないというのも本音だろう。

「Financial Post」の「Robots rising: Coronavirus drives up demand for non-human labor in China」は今回の新型コロナウイルス蔓延による労働者不足、人との接触禁止措置の結果、自動化技術へのニーズが高まっていると指摘している。既に、これまではサービスロボットに縁がなかったところからの連絡が続いているとMobile Industrial Robotsの担当者が答えている。この記事では日本のMUINの中国代表もコメントを寄せている。
また、「The Robot Report」の記事「COVID-19 pandemic prompts more robot usage worldwide」は、政府関係者はコロナウイルスの拡散を遅らせるための「スケーラブルなソリューション」を求めていると述べている。ロボットをはじめとした自動化技術の一部は、それになり得ると思う。

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