銀河って、どうやってできるんだろう?
いくつか仮説がある中で、実際どれが正しいのかはまだわかっていません。大きい銀河、小さい銀河、楕円形の銀河、うずまき銀河…、いろいろな種類の銀河がどのように形成されるのかも、詳しいことはわかっていません。
銀河のなりたちはさても謎が多いのですが、このたび解明の糸口になりそうな発見がありました。なんでも、小さいと思われていた大昔の銀河のまわりには、想定されていたよりも3〜5倍ほど大きな「ダークマターハロー」が取り巻いているそうなのです。
ダークマターハローって?
新たな発見があったのはTucana II(きょしちょう座矮小銀河)と呼ばれる比較的小さな銀河。地球から16万3000光年離れたところにあります。Tucana II銀河の恒星はみな金属量が非常に低いことから、鉄などの重い金属元素が生成されていなかった頃の初期の宇宙に誕生したと考えられています。したがって、Tucana IIも宇宙が誕生してから最初に、できた銀河だと考えられています。
MIT Newsによれば、マサチューセッツ工科大学(MIT)の宇宙物理学者・Anirudh Chiti教授を筆頭とした研究者チームが、Tucana IIの星がどれぐらい古いのかを調べることで初期の銀河のなりたちを明らかにしようとしたそうです。そこで、オーストラリアにあるスカイマッパー(SkyMapper)望遠鏡のイメージフィルターを通して鉄含有量が低い星を探し出し、さらにアルゴリズムをかけてもっとも金属量が低い=もっとも古い星を割り出しました。すると、2014年にすでに発見されていた観測史上最古の恒星に加えて、同様に古い恒星を新たに9つ発見したそうです。
ところが、新しく発見された星たちは銀河の中心部から遠く離れたところにありました。あまりにも遠いので一見銀河と関係がないように見えるのですが、まるで排水口のまわりをぐるぐる回る水のようにほかの星たちと連動しているために、まぎれもなくTucana IIの一部だとわかったそうです。
なぜ銀河の中心からそんなに遠く離れていても銀河の外へ投げ出されないのか。その謎を説明できるのが「ダークマターハロー」です。
ダークマターハローは、平たく言えば物質の集まり。ダークマターと、ふつうの物質でできたガスや塵が集まっている領域で、見えないながらも銀河の一部として存在し、強い重力を及ぼして天体の動きを支配しています。ダークマターハローがあるからこそ、銀河の外縁に存在している恒星も銀河の重力から逃げ出せないんですね。このダークマターハローの存在を考慮すると、Tucana IIは以前考えられていたよりも3倍から5倍の大きさであることがわかったそうです。
「銀河がそのかたちを保つためには、電磁波から観測できる物質よりもはるかに多い量の物質が必要となってきます」とChiti教授は米Gizmodoに電話で説明しています。「このことから、銀河を束ねている物質としてダークマターの存在が仮定されるようになりました。ダークマターがなければ、銀河の外縁に位置している天体、もしくは銀河そのものが回転しながらばらけてしまうでしょう。」
また、共著者であるMITの物理学教授、Anna Frebel氏は、MIT Newsにこのように語っています。
宇宙で最初に誕生した銀河は以前考えられていたよりもずっと大きなダークマターハローを持っていることが示唆される結果でした。これまでの通説では初期の銀河は小さくて弱っちいものだと考えられていたんですが、実は私たちが考えていたよりも数倍大きかったかもしれない。全然小さくなんてなかったかもしれないんです。
銀河の「共喰い」
さらにもうひとつの発見もありました。
今回見つかった最古の恒星はTucana IIの中心から遠く離れたところにあり、中心部に位置している恒星よりもさらに古いことがわかりました。通常ならこの逆で、このような恒星の配置が矮小銀河内で確認されたのは初めてだそうです。このことから、Tucana IIは元はふたつの銀河がぶつかって混ざり合った結果なのではないかと推測されるそうです。
Frebel教授によれば、Tucana IIは「銀河の共喰いの事例として最古かもしれない」そう。「ひとつの銀河がそれよりも原始的で小さい銀河を飲み込んで、小さいほうの銀河の恒星を外縁に向かってばらまいたと考えられます」。
Tucana II銀河そのものも、いずれは天の川銀河に吸収合併される運命にあるそうです。そしてその天の川銀河でさえ、早ければ30億年後にはお隣りのアンドロメダ銀河と混ざり合ってひとつの銀河になると考えられています。宇宙の進化とともに銀河の大きさも進化してきたのは、この「共喰い」によるところが大きいのです。
ダークマターが銀河のなりたちを解き明かすヒントに?
銀河の成長のしかたについて、現在もっとも有力視されている「コールドダークマターモデル(CDMモデル)」では、初期の宇宙に密度の揺らぎがあったためにインフレーション時に小さな物質のかたまり(ハロー)ができはじめ、その重力に引き寄せられてガスや塵がどんどん集まってやがては星が生まれ、星が集まってやがては銀河ができ、その銀河同士が合併を繰り返す中で大きく成長してきたと考えます。
でも、そもそも初期の銀河が小さくなかったとしたら?CDMモデルとは違うシナリオがもっと適切になるのかもしれません。今後銀河のなりたちを解明していく上でも、ダークマターは最重要な鍵となりそうです。
Chiti教授らの研究は、学術誌『Nature Atronomy』に掲載されています。
Reference: MIT News, Nature Atronomy, AFPBB News, 天文学辞典
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