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Wednesday, February 24, 2021

電力需給逼迫 - 福井新聞

安定供給へ検証、方策示せ

2021年2月25日 午前7時30分

 【論説】昨年暮れから今年1月にかけての寒波で全国的に電力需給が逼迫(ひっぱく)し、福井県内を管内とする北陸電力、関西電力でも電力供給が一時綱渡りの状態となった。寒波による急激な需要増に加え、火力発電の主力燃料である液化天然ガス(LNG)の在庫不足など複合的要因が絡むが、電力の「安定供給」のもろさが露呈した形だ。

 北陸エリアでの電力需給が逼迫したのは1月7~8日、12日。北陸電力送配電によると、7日は気温低下で暖房などの電力需要が増加。需給状況が悪化する恐れがあったため、他の送配電事業者から最大35万キロワット、続く8日にも最大30万キロワットの電力融通を受けた。供給力に占める需要の割合を示す電力使用率は7日に98%、8日には99%に達していた。

 一方の関電管内では、12日の電力使用率が99%に達し、関西電力送配電は他電力から最大189万キロワットの融通を受けしのいだ。全国的にも1月、電力供給の余力を示す予備率は安定供給の目安となる3%を下回る地域が続出。各社間で電力を融通し合ったりと対応に追われた。

 今回の逼迫は、直接的には寒波による暖房用の電力需要の急増だろう。ただ新型コロナウイルス感染拡大などによる世界的な物流停滞でLNGが不足し、出力を上げられないことに加え、悪天候による太陽光の発電量の低下、原発の再稼働が進まないなどさまざまな要因が絡み合っている。

 今回の需給逼迫で見逃せないのが2016年の電力の小売全面自由化以降に急増した「新電力」と呼ばれる電力小売業者の動向だ。

 新電力の多くは自前の発電設備を持たないところも多い。卸電力取引所などで電力を調達、利用者に供給している。ところが全国的に受給が逼迫したことで、取引所への電力供給も不足。一部の新電力が計画通りに供給力を確保できなくなったという。北陸電力グループの分析では、同社の管内顧客需要に対する供給力は確保できていたが、新電力の不足量を補塡(ほてん)する形で供給したことで結果的に他エリアから受電を余儀なくされたとしている。

 電力自由化以降、取引所での電力売買量は大幅に増加し流動性も高まったが、今回のような異常時には供給力の安定性に疑問を感じてしまう。

 電力の安定供給は国の重要な根幹でもある。今回の需給逼迫は電力会社だけでは解決できない問題をはらんでいることが露呈した。国は逼迫の検証を早急に行い、安定供給への方策を示すべきだ。

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