渡り鳥などの一部の鳥類は地球の磁場(地磁気)を知覚することで正確な方角に飛ぶ能力を有すると知られています。そんな地磁気を知覚する能力について、「人間の男性はブルーライトによって地磁気を検知している」という研究結果が2019年に発表されています。
Blue light-dependent human magnetoreception in geomagnetic food orientation
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0211826
地磁気は地球の表面ではかなり弱く、せいぜい冷蔵庫に貼り付くマグネットの100分の1程度の磁力しかありません。しかし、これまでの研究では渡り鳥やウミガメは地磁気を検知して方角や場所を判断するという研究が発表されてきました。
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by Tony Hisgett
この地磁気を検出するという能力について、渡り鳥の場合は眼球内の青色光に敏感に反応するタンパク質「クリプトクロム」が関係しているという研究結果が2018年に報告されていました。
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by Richard Hurd
このクリプトクロムは人間の眼球内にも存在します。しかし、2019年に韓国の慶北大学のKwon-Seok Chae氏らが行った実験では、「男性のみ」が地磁気を目で検出しているという結果が得られました。
この実験は、被験者にイヤーマフを装着した状態で目をつぶったまま北を識別してもらうというもの。実験室は月の出ていない夜に相当する3×10-4ルクスという明るさに保たれており、被験者は北の方角をまず最初に教えてもらった後、回転式の椅子を使って方角をわからないようにされてから北を指すように求められました。また、「古代の人類は地磁気を頼りに狩りをしていた」という仮説から、被験者は飢餓状態に置かれ、「正解時にはチョコチップがもらえる」「正解してももらえない」という2つの条件で実験は行われました。
実験の結果、「チョコチップがもらえる」かつ「被験者が男性である」場合は、被験者が北を向く率が有意に高かったとのこと。さらに、対照実験として「磁場の向きを変えた状態」や「アイマスクで光をゼロにした状態」での実験も行われましたが、この場合では被験者が向いた方角の偏りはありませんでした。
以上の結果から、研究チームは人間でも「飢餓状態の男性ならば光を頼りに北を知覚できる可能性がある」としています。
なお、2021年には東京大学の研究チームが細胞内に存在する「フラビン分子」が磁気に反応していると発表。磁気を検知する能力の全容を解明に一歩前進しています。
生きた細胞内で生体分子の磁気感受性を直接観測 | 東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0508_00093.html
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