16日に閉幕した主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では、脱炭素社会で普及が見込まれる電気自動車(EV)の生産に欠かせない重要鉱物の安定供給を図るための行動計画も取りまとめた。G7として130億ドル(約1・7兆円)の財政措置をし、共同で重要物資の鉱山開発などを進める。重要鉱物の安定供給を確保してEV普及の足かせをなくすと同時に、経済安全保障の観点から中国など特定国に依存しないサプライチェーン(供給網)構築を目指す狙いがある。
「重要鉱物は今や必要不可欠なものでありながら、特定の国への過度な依存に懸念が生じている。地政学リスクにさらされている」。西村康稔経済産業相は会合閉幕を受けた記者会見で、重要鉱物の安定供給の必要性を強調した。
EV向けのバッテリー生産にはコバルトやリチウム、ニッケルなどの重要鉱物が必須で、世界規模での獲得競争が激しくなっている。こうした重要鉱物の加工・精錬過程は、中国に集中している。
米中の対立が続く中、中国政府はEVにも使われるレアアース(希土類)を使った高性能磁石などの製造技術の輸出を禁止する方向で検討するなど、シェアの高さを武器にEV関連分野で強い措置を講じようとする動きもある。
こうしたことを背景に、G7気候・エネルギー・環境相会合では共同声明で、中国を念頭に「重要鉱物に関する市場歪曲(わいきょく)的な措置及び独占的政策に反対」するとけん制。行動計画には、長期的な需給予測▽鉱山の共同開発▽使用済みEVバッテリーなどのリサイクル促進▽代替技術の開発▽供給途絶への対応――の5点を盛り込んだ。
G7内ではEVシフトが加速している。英国は2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、欧州連合(EU)も水素と二酸化炭素(CO2)を原料にした合成燃料「e―fuel(イーフュエル)」を除く、ガソリン車など内燃機関車の新車販売を35年までに禁止する方針を示している。
米国は12日、自動車メーカーにCO2の大幅削減を迫る新たな排ガス規制案を発表しており、提案通りになれば32年に新車販売の67%がEVになる見通しだ。日本は30年代半ばにガソリン車の新車販売をやめ、EVやハイブリッド車(HV)の電動車に切り替える。
中国でもEV販売は拡大しており、EVバッテリーは19年から50年にかけて世界全体で、容量ベースで約40倍に増える見通しだ。米ワシントンで12日に開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議でもEVに使う重要鉱物のサプライチェーンを強化する共同文書を取りまとめている。
一方で、会合ではEVに対する各国の温度差も明らかになった。欧米はEV普及の数値目標の設定を求めていたが、HVなども活用したい議長国・日本が突っぱね、具体的な目標設定は見送った。共同声明には数値目標に代わり、新車以外も含めたG7の自動車分野全体で「35年までにCO2排出量を少なくとも00年比で50%削減する」と明記されたが、20年時点の排出量は00年比で約5%減にとどまっている。
日本側は「野心的な目標だ」(経産省)と強調するものの、閉幕後の記者会見でドイツ政府団はCO2半減目標について「多くのメンバー国にとっては35年までに内燃機関の新車の生産をやめるということだ」と述べ、数値目標の設定に難色を示した日本にクギを刺した。各国のEV戦略の違いがG7の連携に不協和音をもたらした形だ。【横山三加子】
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