新型コロナウイルスの影響で、日本酒の出荷量が落ち込んでいる。兵庫県内では4度目の緊急事態宣言が続く中、飲食店向けの業務用の出荷が激減。国内有数の「酒どころ」である県内の酒造会社では、売り上げの前年割れが続く。各社は“巣ごもり需要”向けの商品開発などで巻き返しを図っている。(赤松沙和、末永陽子)
日本酒造組合中央会(東京)によると、2020年の国内出荷量は前年より約10%減少。中でも飲食店での需要が高く、高価格帯とされる純米酒や本醸造酒など「特定名称酒」は、14%減と大幅に落ち込んだ。
県酒造組合連合会(神戸市東灘区)が調べた69社のデータでは、20年の県内の出荷量は前年比で7・4%低下した。
ただ、大手が占める割合が高いため、県内の中小メーカーは「小さな蔵は3、4割減が続き、生き残るのに必死」と明かす。
別の酒造会社は「低価格の紙パックが好調で出荷量が減っていない大手もあるが、売り上げはどこも厳しい。酒類提供の禁止で『酒=悪』のイメージが広がるのが何よりつらい」と懸念する。
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「先行きが見えない状況が本当に厳しい」
日本盛(西宮市)の担当者は肩を落とす。
同社の売り上げはコロナ禍に入った昨年から前年割れが続く。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象から外れた今年3月は10%上回ったものの、4月に再び前年を下回った。特に、業務用は「ほとんど出ていない」という。
そんな中好調なのが、糖質やプリン体をゼロにした商品や栄養価の高い甘酒。担当者は「コロナ禍の新しい飲み方や商品をどう提供し発信するかが課題。今はできることをしたい」とPRに力を入れる。
「白鹿」の蔵元である辰馬本家酒造(同市)も、試行錯誤を重ねる。
8月には業務用で一番の売れ筋である「上撰 黒松白鹿 超辛 本醸造」で小売店向けのサイズ(720ミリリットル)を開発して発売。今春には1人分の「飲みきりサイズ」(180ミリリットル)も投入した。
それでも業務用の売り上げ減はカバーしきれていない。コロナ前に売り上げの20%を占めていた業務用は、現在6~8%まで下がった。担当者は「時短や休業がいつまで続くのか」とこぼす。
苦境に立たされているのは灘五郷だけではない。
姫路市の灘菊酒造。業務用だけでなく、蔵に併設する飲食店などの利用客も落ち込んだ。
杜氏(とうじ)で社長の川石光佐(みさ)さん(43)は「観光客も減って、自社の飲食店も業務用もだめ。トリプルパンチです」とため息をつく。
自宅用商品を強化しようと、9月には、白こうじを使った新商品「白麹(こうじ)特別純米 ブランミサ」を発売。「初心者にも飲みやすい味」に仕上げた。
また、300ミリリットル入りの小瓶が伸びているため、飲み比べできるようセット売りするなど工夫を凝らす。「少人数で楽しむ人が増えているので、ニーズに応じた商品を提供したい」と話した。
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