国内製薬企業が開発を進める新型コロナウイルスワクチンが令和4年の実用化を見据える。米ファイザーや米モデルナなど海外製の接種が進む中、各社が参入の機会をうかがうのは3回目接種だ。国内では3回目接種でも海外頼みが続くが、供給スケジュールは不透明で、安定供給を図る上でも、国産ワクチンの実用化が急がれる。
塩野義製薬は開発中のワクチンの最終段階の臨床試験(治験)を12月25日、ベトナムで始めた。国産ワクチンの治験が最終段階に入るのは初めてで、4年3月までの承認申請を目指す。
国内の製薬企業のワクチン開発は「周回遅れ」と揶揄(やゆ)されてきた。ようやく4年中の実用化が見込まれ、春の供給を目指す塩野義をはじめ、第一三共とKMバイオロジクス(熊本市)が4年末までの実用化を目指す。ただ、第一三共は最終段階の治験について「国内で数千人規模で予定しているが、接種がかなり普及している状況で、未接種の治験参加者を集めることが非常に難しい。4年の早い段階は厳しいかもしれない」(広報担当者)とし、進捗(しんちょく)に不安材料は残る。
すでに人口の8割近くが接種を済ませている国内で、国産ワクチンの利用が見込まれるのが3回目接種などの追加接種だ。塩野義は3年12月、ファイザー製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを2回接種してから6カ月以上たった人を対象にした治験も始めた。同社は「新型コロナの流行長期化で、3回目接種など今後も継続したワクチン接種が必要となることが予想される」とみる。
「より少ない副反応」 安全性の面でも需要に期待
現在、国内で承認されているのはファイザーとモデルナ、英アストラゼネカのワクチン。政府は3回目接種を想定し、令和4年分としてファイザー製1億2千万回分、モデルナ製9300万回分の供給契約を結んでいるが、海外製のため供給スケジュールは確定していない。塩野義など国内製薬企業はワクチンを安定供給していくためにも国産の必要性を訴える。
KMバイオロジクスも3回目接種での利用を想定した治験の計画を進める。同社はインフルエンザワクチンなどでも使われてきた従来型の不活化ワクチンを開発する。今年3月に始めた治験などからmRNAワクチンに比べて副反応は少ないと分析しており、同社は「安全性の面からも3回目接種において需要はある」とし、同社広報は「4年中に3回目接種用として承認を得て、供給できるよう治験スケジュールを当局と協議中」と説明する。
一方、田辺三菱製薬のカナダの子会社が開発したワクチンは令和4年の実用化が視野に入ってきた。タバコ属の植物にウイルスの遺伝子を組み込み、ワクチンの成分を抽出する世界初の植物由来ワクチンで、3年12月にカナダで承認申請を行った。国内では4年春に承認申請を行う計画だ。
同社の上野裕明社長は「安全性がかなり高いことが分かってきた」とし、3回目接種の治験についても「4年早々に着手することになる」と明かす。カナダ政府とはすでに供給契約を結んでいるが、北米にある工場で生産したワクチンを日本向けにも供給する計画で「両国の医療の安全保障に貢献できると思っている」と強調している。(井上浩平、安田奈緒美)
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