2050年までに脱炭素社会を実現させる“切り札”とも目される水素の普及に向け、石油元売り最大手の「ENEOS」(エネオス、東京都)が、川崎製油所(川崎市)で水素供給の実証実験を始めるなど取り組みを加速させている。 京浜臨海部で稼働している製油所を、将来的に水素を輸入・貯蔵・供給する一大拠点に切り替えるためで、国内最大級の根岸製油所(横浜市)も有力な候補の一つ。日本の高度経済成長を支えた石油コンビナートは「水素コンビナート」へと変貌を遂げることになりそうだ。 再生可能エネルギーを利用した二酸化炭素(CO2)フリーの水素は「究極のクリーンエネルギー」として注目されているが、現状では国内での製造コストが高く、海外からの輸入が見込まれている。ただ、輸送には水素をマイナス253度まで冷やして液化させる方法があるものの、新たに専用の輸送・貯蔵設備が必要となることからコスト面で大きな課題となっていた。 一方、同社などは水とトルエンを電気分解することで、水素を化学的に固定させたメチルシクロヘキサン(MCH)を生み出す技術を確立。液体化したMCHの状態であればガソリンなどと同様に常温管理できるため既存のタンカーで効率的に輸送できるほか、既存の貯蔵タンクなども利用可能で、初期投資を大幅削減できる利点があるという。 これらの取り組みを踏まえ、川崎製油所では21年秋から既存の精製設備を使いMCHから水素を取り出す実証実験を開始。取り出した水素を石油精製の工程で活用するなど、安定的に供給できることを確認した。
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