最近「品不足」のニュースを見る機会が増えた。それは給湯器だったりゲーム機だったりiPadだったりプリンターだったりするけれど、デジタルカメラもその1つだ。あるカメラ専門店の方に話を聞くと「カメラ・レンズともに供給不足は深刻です」という。
ある製品が品薄になる時、実はかなり前から一部部品の供給が滞っていて、生産が間に合わなくなるというケースが多い。けれども部品不足が末端の消費者に影響を与えるまでのタイムラグは何カ月もあるわけで、その間に部品をやり繰りしたり、代替品を探したりして対策が進むことも多い。しかしコロナ禍で起きた今回の品不足は根が深そうだ。
何より驚いたのはソニーの件。
11月19日に「α7IIシリーズ、α6400ボディ、α6100(ブラック)」の受注を一時停止するというリリースが出た。
理由は「世界的な半導体不足などの影響」。ソニーになぜこの機種なのか尋ねたところ「需要と生産状況の兼ね合いを見ながら(判断した)」ということだった。
確かに、α7IIは旧型モデルですでに主力ではないし、α6000系も主力は「α6600」やVLOGCAMの「ZV-E10」だ。と思いきや、12月3日にはZV-E10の注文の受付を一時停止というリリースが出たのである。
ZV-E10はVLOGという新しい市場を開拓したヒット作であるが、12月になって急にリリースが出たのは気になるところ。
ZV-E10はα6400がベースになっていると思われるので、α6xxxシリーズに必要な部品の供給に問題が生じているのではないかと思う。
といっていたら、事態がさらに進んでしまった。
12月23日に新たなリリースが出たのだ。
まず、旧機種ながら現行ラインアップに名を連ねていて、11月に受注を中止したα7IIとα6100は生産完了に。
そして新たにα6600と「α7C」の注文受付停止が発表されたのである。α6600まで影響を受けたということは、ZV-E10を含むα6xxxシリーズに必要な部品調達に問題があったのだろう。
さらにこの年末年始の時期にエントリーモデルであるα7Cにまで波及するとなると、上位機種は大丈夫とはいえ影響は大きそうだ。
確かにソニーのWebサイトを見ると確かにこれらの受注が止まっている。
ここで某販売店の声を聞いてみよう。一週間前の情報なので、最新ではないけれども。「ソニーは深刻で、α7sIIIとZV-E10が入荷しません」(表現はちょっと和らげております)という。
今回、ソニーに限らず供給不足のアナウンスを出しているメーカーにコメントを貰ったのだが、キヤノンは市場全体に通じるコメントを返してくれたので掲載したい。
「20年下期以降、コロナにより徐々に足元では落ち込んでいた個人消費が想定以上に回復しました。この需要の急回復に応じた供給体制を整えようと対処してきましたが、半導体を中心とした部品確保が困難な状況となりました」(キヤノン)
秋から年末にかけてデジタルカメラに対する需要が大きく回復したタイミングで部品の供給不足がかぶったということだ。
日本では感染者数がぐっと減って消費が活発になってきたが、海外ではまだおさまっておらず、工場が止まっていたり、流通が滞ったりしてそのギャップが出てきたのだと思う。
そのキヤノンは12月3日に「商品の供給状況についてのお詫びとご案内」を出した。
「EOS R3」とレンズだ。特にEOS R3は「新たにご注文いただく際は、お届けまでに半年以上かかる場合があります」という具体的な内容。
超大型の新製品だから、予約も多く入ったのだろうなあと思う。
ここで某販売店の声を聞いてみよう。
「キヤノンはEOS R3以外のボディは問題ありませんが、R3は予約数に比べてわずかしか入荷していません。RFレンズも人気があるレンズは軒並み不足しています」(表現をちょっと和らげております)という。
リリースの通りだ。R5やR6を狙ってる人は一安心だが、どうしても欲しいレンズがある人はちゃんと手を打つべしってところか。
富士フイルムは5月に新製品の「X-S10」と交換レンズについて「部品調達の遅延により、製品のお届けまでしばらくお時間をいただく場合がございます」というリリースを出している。
さらに10月には「XF23mmF1.4R LM WR」の発売が2021年11月から2022年2月に延期された。
富士フイルムによると「供給不足が始まったのは2021年の5月頃」だったという。
ここで某販売店の声を聞いてみよう。
「富士フイルムはボディではX-S10、X-E4、レンズではXF 27mm F2,8WRが足りません」(表現をちょっと和らげております)。年末はカメラが売れる時期なのに売るカメラが足りないという販売店の声は切実だ。
ニコンは秋から何度か、バッテリー関連やレンズに関する受注停止のお知らせや受注再開のリリースが出ており、最新の情報では12月14日に「一部受注停止製品 受注再開についてのお知らせ」がある。
目立ったところでは「Z fc」のレンズキット。7月下旬発売予定から10月に延期している。
ニコンによると想定を超える予約に加えて「コロナ禍の影響にも起因する部品供給の遅延」による延期だった。
12月24日発売の「Z 9」に関しては予約がたくさんはいっているのに加えて「半導体不足の影響」があるという。12月8日にリリースが出ている。
ここで某販売店の声を聞いてみよう。「ニコンはZ 9発表以来、レンズの販売が好調で、人気のレンズに欠品がある」という(表現をちょっと…以下略)。
意外だったのはデジタル一眼レフ。デジタル一眼レフの新品を買うお客さんはさすがに減っているが、「D850」や「D780」はバックオーダーを抱えているそうだ。全生産能力をZ 9に注ぎ込んでいるという噂も。
デジタルカメラ界への影響も大きかった半導体不足
と、デジタルカメラにおける供給不足について、いくつかのメーカーと、カメラ専門店にコメントを貰ってまとめてみた。
こうしてみると、もともと人気シリーズの新製品は予約が多く入って品不足になる傾向はあったものの(近いところではキヤノンのEOS R5/R6がそうだった)、今年は待望のハイエンドモデル投入+コロナ禍による部品不足で年末登場の大物3モデル(ソニーのα7IV、キヤノンのEOS R3、ニコンのZ 9)が軒並み予約待ち……下手したら数カ月待ち必須という状況になり、年末商戦なのに一番の売れ筋商品が足りないという販売店の嘆きが聞こえてきたわけである。
さらにエントリー機でも人気機種には供給不足が現れており、この先まだ不足するモデルが出ても不思議はなさそうだ。いつまでこの影響が続くのかは分からないが、年末年始に新しいカメラで撮影に行くぞって人は注意したい。
ここではデジカメの話に絞ったけど、今回のコロナ禍はグローバル化した世界を象徴するかのように、いろんなタイムラグを経て我々の生活を脅かしに来ており(フライドポテトとか!)、もうちょっと覚悟しておく必要があるようだ。
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