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Wednesday, December 1, 2021

通学路の安全 住民ニーズと行政の対策にギャップ 千葉・市川 - nhk.or.jp

「自転車とバイクと車が猛スピードで通る」
「自転車が子どもたちの脇を高速で通り過ぎていく」

NHKが危険な通学路についての情報を募集したところ、近隣住民からほぼ同じ内容が3件、寄せられた場所がありました。同じ場所で同内容の投稿が3件というのはめったになく、どのような場所かとても気になりました。
現場に足を運んでみると、住民のニーズと、それに応えきれない行政のギャップが見えてきました。
(千葉放送局/記者 坂本譲)

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朝は自転車でいっぱい 夕方は車やバイクも…

投稿のあった、千葉県市川市の八幡地区です。
小学校の通学路になっているこの道路。スクールゾーンに指定されていて、朝の登校の時間帯は車は通行できません。ただ、駅までの一本道で、通勤・通学の自転車が道路いっぱいに広がり、次々と通り過ぎていきます。

午後の下校の時間帯は、車も通行します。道幅もおよそ5.5メートルと狭く、車やバイク、自転車などのすぐ脇を児童たちが歩く状況です。

住民からは不安の声

投稿を寄せてくれた40代の男性です。
かつて子どもがこの通学路を使い、小学校に通っていました。PTAの一員として朝の登校中の子どもたちの見守り活動をする中で、危険を感じていたといいます。

男性
「駅に向かう道なので、多くの人が利用する交通量の多いところで、その中を児童たちが歩いているというのが非常に危ない状況ですね。朝の通学の時間帯にはPTAなどが要所要所に立って旗振りをして、子ども達を安全に誘導しています」

特に男性が危険を感じるのは、交通規制が解除される午後の下校の時間帯だといいます。

男性
「特に夕方の帰宅の時間になったときには車もバイクも走っています。そこをさらに自転車や歩行者の方が避けながら通り、子どもも歩いているという状態なので、混沌とした状況です。いつ事故に遭うか分からないので、根本的な解決策があるならやった方がいいと思います」

子どもの「すごく怖い」という声を聞いて…

同じ場所についての投稿を寄せてくれた40代の女性は、普段この道路を使っていて、子どもたちが事故に巻き込まれないか、不安を感じているといいます。

女性
「朝はみなさん競輪選手のような感じでものすごい勢いで、1列ではなくて横並びになって行くので、自転車に乗る側としても、歩く側としてもすごく怖いです。子ども目線で見たら本当に恐怖だと思います。保護者や地域の方が旗を持って見守っているんですが、限界はあるのかなと思います」

女性の2人の子どもたちも、この通学路について「怖い」と訴えているといいます。

女性
「NHKの番組を見ていたときに、子どもから『この道がすごく怖いから投稿してほしい』と言われたので、情報を寄せました。私以上に体も小さいのでより恐怖を感じているんだと思います。事故が起きる前に、絶対に起きる前に、危ないっていう声をすくい上げて、対策してほしい」

対策「実施済み」住民は対策求める 

実はこの通学路、市が独自で行っている点検で去年、対応が必要な場所としてあげられ、その後、対策は「実施済み」とされていました。

対策として市は、外側線を引き直したり、注意喚起の標示を設置したりしました。

しかし、ことし行われた八街市の事故を受けた緊急点検では、再び学校から「危険性は変わっていない」として、対応が必要だと報告されました。

今回話を聞いた方々は、以下のような対策が必要ではないかと話しています。

住民が求める対策
・朝の通学時間帯だけでなく、下校の時間帯も車両を通行止めとする。
・車両や自転車と、歩行者のスペースを分けるガードレールなどを設置する。
・ハンプを設置するなどして車や自転車のスピードを緩める工夫を行う。 など

市は、こうした学校や住民の要望は十分理解したうえで、対策は以下のような理由から限界があるといいます。

市の説明
・道幅が狭く十分な通行スペースが確保できないため、ガードレールなどハード面での整備は厳しい。
・下校の時間帯は登校の時間帯に比べて時間の幅が広いうえ、生活道路で車の利用者もいるので、午後も車を通行止めにするのは難しい。 など

また、この地区を管轄する市川警察署は、この通学路では、実際に交通事故などが顕著に発生していないとして、交通規制を強化するのは難しいということです。

今回の点検の結果を受けて、市は警察などと協力して、注意喚起の看板を追加したり、街頭での啓発活動を増やしたりすることを検討しているといいます。

住民と行政のギャップを埋めるために

住民が求めるニーズと、それに応えたくてもなかなかできない行政のジレンマをどのように解決できるか。
交通工学に詳しい専門家は住民と行政が連携して対策を行うことが必要だと話します。

日本大学理工学部・小早川悟教授
「今回の現場は、事故は起きていないけれども『ヒヤリハット』のような危険を感じることが沢山起きている場所だろうと思いますので、どういう対策をするのか改めて考える必要があります。行政だけとか住民だけではなくて、行政と住民が一緒に知恵を出し合って考えていく枠組みを作っていかないと、生活道路の安全対策はなかなか進みません。そこに生活している住民にどう安全対策の仕組みに参加してもらうかを積極的に考えていくことが重要なポイントかなと思います」

そのうえで、専門家の意見などを活用することも有効だとして、制度の利用も推奨しています。

「自治体が国土交通省に申請すると、専門家の派遣を受けたり、周辺道路の交通状況データなどを提供してもらえたりします。そうしたデータを見たり専門家の意見を聞いたりするなかで、住民と行政が対策を一緒に考えていく枠組みが非常に有効ではないかと思います」

取材後記

今回の通学路の現場では、子どもたちの安全を危惧する、複数の住民からの不安な声が聞かれました。その状況を解決しようと行政や警察などは必死になって対策にあたっています。しかし、現場の状況、予算や制度の側面などからすべての問題を解決するのは難しい現状があることも取材を通じてわかりました。

しかしそこで止まるのではなく、専門家が指摘するように、通学路として使われるような生活道路については、住民と行政が一緒になって対策を考えていくことが重要です。
通学路の安全を守るためには、住民の視点、行政の視点での不断の見直しが欠かせません。難しいときには第三者の専門家に助けを求めるなどして、諦めず、危険と呼ばれる通学路を一つでも減らすために、取り得る対策を推進していく姿勢が重要だと感じました。

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