正月飾りに欠かせない枝もの用クロマツの産地化を目指すプロジェクトが、宮城県内で進行している。やせた土地に向き、コメや露地野菜に比べて高収益が見込まれる。枝もの用クロマツの国内生産が縮小傾向の中、県産の出荷が本年度始まり、関係者は「宮城を一大産地にしたい」と思い描く。
プロジェクトに携わるのは登米、大崎、涌谷、南三陸4市町の生産者1法人・4個人と、花卉(かき)卸売業者のなにわ花いちば(大阪市)、輸送業者の光運輸(秋田県能代市)でつくる「みやぎクロマツ生産拡大連携協議会」。2021年6月に設立され、東日本大震災の被災跡地、中山間地域の遊休農地など計約3ヘクタールで栽培する。
枝もの用クロマツは栽培期間や枝の切り取り方で用途が異なる。3~4年で高さ約1~2メートルに育ったクロマツは門松や生花、花束に、長さ約20~40センチの枝は仏花やアレンジメントにそれぞれ利用される。
協議会は栽培技術や出荷規格、効率的な出荷方法を研究。県の「園芸作物サプライチェーン推進事業」補助金を活用して収穫機械やフォークリフトを導入し、秋に初収穫を迎えた。
11月中旬から約1カ月間、需要のある東京、大阪、岐阜、茨城4都府県と台湾に計約15万本を出荷した。会長で生産者の後藤敏さん(66)は「栄養が少なく、水はけの良い土地で育つ。既存の産地に追い付き、追い越し、収穫の風景が宮城の秋の風物詩と言われるように頑張りたい」と意気込む。
「生産者が高齢化して枝もの用クロマツの供給が年々減り、全く足りていない。中国からの輸入品に依存している」。南三陸町で約30年間輪菊を手掛けていた後藤さんは、取引先のなにわ花いちばの関係者から強い要望を受け、18年から葉タバコの耕作放棄地で枝もの用クロマツの栽培に挑戦した。
国内の最大産地は茨城県で、東北では秋田県の能代市や三種町が先行栽培する。協議会は当面、栽培面積を現在の約3倍に当たる10ヘクタールに拡大したい考え。機械や作業場の共有化でコストを圧縮するとともに、沿岸の砂地での栽培も視野に入れる。
なにわ花いちばの奥田芳彦社長(58)は「温暖化の影響で産地が北上しており、今は東北がベスト。宮城で大幅に増産してほしい」と熱い視線を送る。光運輸の幹部も「秋田と宮城の産地が共存共栄し、松をめでる文化を継承したい」と同調する。
宮城県の試算などによると、枝もの用クロマツの10アール当たりの販売額は480万円。ネギの約32万円、タマネギの約18万円、コメの約11万円を大きく引き離す。県園芸推進課は「収益性の高い園芸産地の形成を通じた後継者の獲得、地域の雇用確保に貢献する」と協議会の飛躍を期待する。
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