電力供給力の過剰と不足。両極端な課題が先月来、相次いで浮き彫りになった。
需給バランスが崩れると、大規模停電を引き起こす恐れがある。供給力を引き上げるとともに、送電網を増強し、大規模な蓄電設備で調整機能を拡充するなど、安定供給への取り組みを強化しなければならない。
四国電力送配電などは今月、再生可能エネルギー発電事業者の一部に対し、発電の一時停止を求める出力制御を行った。太陽光発電量が増え、家庭での暖房使用が少なくなる穏やかな好天と、産業需要が減る休日が重なったためだ。
政府は昨秋改定したエネルギー基本計画に、再生エネを最優先で導入する方針を明記した。脱炭素化への決意を示した形だが、再生エネ拡大の旗を振るなら、発電能力をフルに発揮させる環境を整える必要がある。事業者と共に、余った電力を有効活用する道を探ってほしい。
例えば九州電力には、出力5万キロワット、容量30万キロワット時の大型蓄電池設備がある。一般家庭3万戸の1日の電気使用量をまかなえる規模。出力制御の全面回避には至らないが、制御量を抑制する効果は出ているという。
同様の設備を、さらに大きな規模で全国に整備することはできないか。電力会社ごとの対応が難しいなら共同で整備、運用する方法もあろう。蓄えて需給調整することが当たり前になれば、再生エネ拡大を一層強く後押しする効果も期待できる。原発依存からの脱却を目指す政府方針にも合致するはずだ。
一方、東京電力と東北電力管内では先月、需給逼迫(ひっぱく)に直面した。東北地方を中心に起きた地震で一部の火力発電所が停止。悪天候で太陽光発電も十分稼働せず供給力が落ちたところへ、気温低下による暖房需要の急拡大が拍車をかけた。停電は回避したものの、来冬も電力不足が予想され、対策は急務だ。
エリアを越える広域融通の強化を図りたい。周波数が異なる東日本と西日本をつなぐ送電網は210万キロワットの容量があるが、通常のやりとりで大部分が埋まり、今回の逼迫解消に使えたのは60万キロワットにすぎなかった。
東西間は2027年度完了を目指して増強が進む。政府は北海道―本州、九州―中国などの送電能力も大幅に高める計画だが、具体化はこれから。できる限りの前倒しを求める。
需給逼迫警報の初発令を巡る政府対応には苦言を呈したい。周知の時間を考慮し前日午後6時をめどとする発令は、3時間以上遅れた。報道陣から問われるまで言わないなど危機感が薄く、結果として節電効果が不十分だったことを猛省すべきだ。
電力の安定供給は、言うまでもなく事業者の重い責務。基盤整備や、太陽光への偏重が指摘される再生エネの多様化推進など、政策面における政府の役割も大きい。国民にさらなる節電意識の徹底が求められていることも、忘れてはなるまい。
からの記事と詳細 ( 電力逼迫と出力制御 安定供給の取り組み 強化したい - 愛媛新聞 )
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