フィリピン統計庁(PSA)は6月7日、5月の消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)を前年同月比5.4%と発表した。この値は2018年12月以降で最も高い数字で、政府のCPI上昇率の目標範囲2~4%を4月に続いて2カ月連続で超過した(注)。
PSAはインフレ率が高まった要因として、食品・非アルコール飲料の上昇率が4.9%と高いことに加え、交通・輸送費の上昇率が14.6%と急激したことを挙げた。
フィリピン・サプライチェーンマネジメント協会(SCMAP)は6月14日、輸送費の高騰について、ロシア・ウクライナ紛争と新型コロナウイルス禍に起因した経済制限が物流にマイナスの影響を及ぼしていると指摘した(「インクワイアラー」紙6月14日)。また、同協会は、物流供給が制約されているために、複数の事業分野でサプライチェーンの混乱が生じ、主要な商品に価格上昇圧力を発生させていると付け加えた。同協会は、こういった物流供給の制約が2023年まで継続するとみている。
市場関係者の間では、国内の高いインフレ率や米国連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き上げを受けて(2022年6月16日記事参照)、フィリピン中央銀行(BSP)が政策金利の引き上げに動くとの観測が流れている(「ビジネス・ワールド」紙6月20日)。
(注)フィリピン政府は物価上昇率の目標範囲を明示し、目標範囲内に収まるように金融政策を運営するインフレターゲットを導入している。政府は2022年から2024年まで、年間のCPI上昇率の目標範囲を2~4%としている。
(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)
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